ナツメグ

ドント・ブリーズのナツメグのネタバレレビュー・内容・結末

ドント・ブリーズ(2016年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

自分はホラーはそこまで詳しいわけではないので、ちゃんとしたことは言えないのですが、今年日本公開されたホラー映画は死霊館エンフィールド事件、ザ・ギフト、ライトオフ、イット・フォローズといったようにいい作品が多く、この映画も宣伝を見て面白そうだったので見に行きました。

この映画の主人公たちは現在のデトロイトという治安が最悪な場所で親からも愛情をほとんど与えてもらえない環境で育ち、町を出ていくために泥棒をしているいるといった事情でアメリカンニューシネマ的なキャラクターとして感情移入しやすかったです。それと捕まった後のことを考えながら盗むというのも後でうまく生かしていて面白い演出でした。

そしてぼろぼろの家で盲目の老人が大金を持っているという情報をつかみ、その家に侵入するしようとするといった話で、少し違うけど制作にサムライミが関わっているということもあり、老人を犠牲にして自分がのし上がろうというのはスペルを思い出しました。

しかしこの老人は予告である通り、盲目だけれどすごく強い人物で、家自体も入るのはそこまで困難ではないが出られないといった感じで、やばい人間の敷地内から出られないというのは悪魔のいけにえからある伝統的な方法で見ていてわかりやすくスリリングでよかったです。

演出も面白く、少ないキャラクターでも彼らが様々なルートで脱出を試みるがそれをどう防ぐのかという攻防や、暗いシーンが多くても何が起こっているのはちゃんとわかりやすかったり、斬新な強姦シーンなど見せ方も工夫されていました。

この映画は伏線の張り方もうまく、いくら大金があるにしても厳重にしすぎてないかや、最初に強盗の少年を殺害した段階でなぜこの老人は警察を呼ばないのだろうと思っていたら、そこもうまく回収してくれてとてもよかったです。

物語的にも主人公の女の子はスペルの主人公ほど身勝手ではないけれど、世の中は不公平だから自分の人生のために相手を犠牲にするという人物なのですが、この老人も神がいない世界だから倫理を捨てて自分の目的を果たすといった感じで、実は主人公と行動原理は結構似てるというのが素晴らしかったです。

っといった感じでいい映画だったのですが気になる点もあり、老人が先回りしていて逃げられないという展開は面白かったし、最初に家に入ったときに伏線としていろいろ見せてもらってそれは生かすのですが、攻撃方法がどうしても銃ばかりで少し単調に感じてしまいました。

リメイク版の死霊のはらわたでも家族や恋人への愛情のようなものを少し削っていることからも主人公の女の子以外は掘り下げが足りなかった気もして人間ドラマは苦手なのかなといった印象でした。

それとこの監督は前作もそう思ったのですが、やはり少しまじめに映画を作りすぎているような気がします。
映画を見終わった後もサムライミだったら爆笑ホラーにしただろう
イーライロスだったらもっと倫理的な善悪を見せつける話にしただろう
ジェームズ・ワンだったらもっと多彩な演出で楽しませてくれただろうと
名監督たちと比べるのはよくないのはわかってはいるのですが、どうしても映画を見終わった後考えてしまい、この監督の色というものをつかめないまま終わってしまった印象でした。

物語自体も丁寧に作られているし、伏線もきれいに張られていて、なるべくセリフではなくアクションで話をみせ、終始緊張感があり、物語にもツイストがある良い映画だったのですが、終盤の展開が長くどこでこの話終わるんだろうといった感じで、見終わった後は面白かったけど疲れたっというのもあり、良い映画だけれどもう少し遊び心がほしかったという、わがままな感想になってしまいました。
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