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クリーピー 偽りの隣人のTorichockのレビュー・感想・評価

クリーピー 偽りの隣人(2016年製作の映画)
4.2
「クリーピー 偽りの隣人」

Jホラーデー一発目。
このあと、「貞子vs伽倻子」行くよー!

香川照之と西島秀俊のコンビとか、もういいよ、しつこいよとか思って見ないつもりだったが、黒沢清映画なので一応観てきました。

のんきで頭の悪い警察シーンから始まり、これやばいかな?とか思ったけど、新居での竹内結子と西島秀俊のやりとりの奥に映る窓の雰囲気と、その部屋に吹く風と揺れるカーテンを観て、黒沢清映画始まりの予感とその匂いを感じ、ワクワクした。
主演・西島秀俊とその右腕的な存在の東出昌大くんという、日本が世界に誇る二大セリフ棒読み俳優も、黒沢清映画の中では、空虚で虚無感を感じさせるような居心地の悪さを体現する象徴になるほど、黒沢清映画の異物感に毎度ながらクラックラッに酔わせていただいている僕からすれば、とても面白い映画だった。
ちなみに、東出昌大くんはファンなので!

何より、映像的に見える効果が本当に面白い。
例えば、川口春奈演じる早紀に聴取をするシーン。失踪した家族について問い詰める西島秀俊演じる高倉がヒートアップするに従って、それまで画面の色温度が高めだったのに、ガクンと色温度が低くなり、冷たい印象だった画が温かさと同時に闇も暗くなる、まるで暗黒の人の心に入っていく感覚というか。そのシーンになると、ガラスの奥ではしゃいでいた学生が、サーーッとはけていく。孤独の象徴?それとも、嘘?もうよく分かんないけど、不安になる。
こういうのを映画館の画面で見るために、ぼくは映画を見てるんだなとつくづく思う。

また、黒沢清映画の車のシーンがすごい好き、窓の外が合成然とした画がいつも変で、気持ちいいから。
"今回は家スリラーの映画だし、車のシーンなしか..."と思っていたが、引っ越しというこじつけにかこつけて、車のシーンも入れてくれたのがすごい嬉しい。
何より!爆笑必至の名シーン。

「落とし穴」

映画の中で落とし穴が見れるなんて!最高!
とんねるずでも、"笑ってはいけない〜"でも、落とし穴っていうのは最高なアトラクション。
落とし穴マニアからしたら、たまりません。
笹野高史は、「珍遊記」から引き続き、いい仕事をしてくれました、ありがとう笹野さん!


形だけの怖いを装ったホラーぶった作品それよりも、不安で不気味さに特化された作品は非常に好感が持てる。
殺しの処理もDIYに富んでて嬉しい。
ちょうど季節は夏目前、映画の後は家に帰って毛布を布団圧縮袋に入れて片付けようと思ってたので、死体を布団圧縮袋でコンパクトにするアイデアには脱帽です。
そのアイデアが不気味でたまらない。
ってか、引越しの近所挨拶で、手作りチョコレートを配る竹内結子演じる嫁なんて、サイコパス予備軍だと思うし、そんな嫁を持つ主人公・高倉も、全くもって激昂したりキレるタイミングが意味不明。この二人が本当に夫婦かも、見終わった今では謎なくらい、不気味。今日何があった?っていう、当たり前の夫婦の会話すらまとも出来ないんだから。

要するに、基本的に出ているキャラクターが全員頭おかしい。
黒沢清映画を見てるなぁ!という実感を改めて感じた。

香川照之のキャラクターも、少し行き過ぎの気はあったけど、少しずれてるくらいでちょうど良かったのになぁ。
まぁ、多分黒沢監督の演出に対して、香川照之の演技過多が原因だと推測するけど。(丹下段平だぞ!利根川だぞ!)

変なところもたくさんあるし、あの針のヤクはなんなの?とかめちゃくちゃのところは多々あるんだけど、映画として、いい意味で壊れてるなと感じさせる部分がたくさんあったので、僕はとても面白く観れた。
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