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クランプス 魔物の儀式のEikeのレビュー・感想・評価

クランプス 魔物の儀式(2015年製作の映画)
3.2
監督(一部脚本も)のマイケル・ドハーティー氏はX-menシリーズの脚本などに参加してきた方。
そんなドハーティ氏が念願の監督デビューを果たしたのが2007年のTrick 'r Treat 。
ただし劇場公開は見送られ作品はDVDスルー扱いとなりましがこの低予算のB級オムニバスホラー、すこぶる評判が良く、今では立派にアメリカではハロウィン作品の定番となっております。
それを受けてようやく続編の製作にGOサインが出たと聞いておりましたがその前に今度はクリスマスをネタにした本作を製作。

タイトルのクランプスは聖なるクリスマスに背を向ける罰当たりな人々を懲らしめるためにやってくるというおっかない存在だそう。
主に東欧の民間伝承で言い伝えられている「お化け」だそうです。
その為、本作で唯一その存在に気付く、一家のおばあさんはドイツ出身と言う設定となっております。

クリスマス休暇に集ったある家族たちが上辺の親密さとは裏腹にいがみ合い険悪さが募る展開に。
息子のマックス君はそんな状況に嫌気がさして「クリスマスなんて大嫌いだ、無くなってしまえばいい」と罰当たりな言葉を吐いてしまいます。
それを聞き届けたKrampusの呪いがクリスマスを白い煉獄に変える…。

アメリカにおいてはThanks Givingと並んでクリスマスもやはり「ファミリー」の為の休日と言う認識があります。
その為、普段は疎遠な肉親や親戚たちと顔を合わせることも多く、良くも悪くもストレスの種となることも多い。
本作はそれを幾分コミカルなネタとして利用しております。
しかしホラーとしてみるとやはり「ファミリー」というのはある種の聖域ともいえる訳で必然的に本作の描写はかなりマイルドなものになっております。
その為、刺激を求めるホラーファンの方々からは不評を買う可能性も…。
ぶっちゃけ本作はホラーと言うよりはファミリー色が濃いダークファンタジーと言った方が相応しい。
Trick 'r Treatでは結構思い切ったゴア描写でハロウィンというイベントを切り取ってくれたドハーティ監督ですが今回はえらく控えめな印象。

そうはいってもトニ・コレッティやアダム・スコット、デビッド・コークナーといった芸達者を揃えたドラマ部分の造りもしっかりしており、ブラックな味わいのファミリードラマとしても見ることが出来るので途中で関心が途切れることはありませんでした。
おなじみのジンジャ―ブレッドクッキーやピエロといったキャラの使い方も新鮮さには欠けますが手堅い出来です。
ドハーティ監督のホラー要素の使い方はやはり堂に入ったものでそれも含めて映画らしさの構築はしっかりと出来ている印象です。

個人的にはやはりもう少し刺激的な描写も欲しかった気がいたしますが甘いだけで終わらせず結末もブラックな味を消し去るようなことはしなかった辺りには気骨も感じました。
ドハーティ監督、今作の後に超大作「ゴジラ:キングオブモンスターズ」を作り上げてヒットさせて注目株となられました。
現在は今度こそTrick 'r Treat2にとりかかる準備中とのこと、楽しみに待ちたいと思います。
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