ろくすそるす

ディストラクション・ベイビーズのろくすそるすのネタバレレビュー・内容・結末

3.9

このレビューはネタバレを含みます

真利子哲也監督作。
監督が敬愛する鬼才漫画家・新井英樹先生から多大なる影響を受けていると知って、居ても立っても居られず鑑賞。結果、新井作品の影響を濃厚に残した、カルト作だと思った。新井英樹の主要作品は、抑制の効かない内なる暴力と性、つまり激しい獣性を抱えた主人公(モン、宮本、穴戸岩男)が、それと呼応するかのように現れる、避けられない巨大な怪物(ヒグマドン、琢磨、穴戸ツル)との闘争を迫られる状況を描いているけれども、本作では、怪物こそ登場しないが(そして意外にも性描写少なめ)、なんと言っても映像化不可能と言われ、深作欣二監督が制作を熱望し、個人的には長谷川和彦監督に撮って欲しかった大傑作『ザ・ワールド・イズ・マイン』におけるモンとトシの関係性が、柳楽優弥、菅田将暉で作り上げられているところにいたく感激した!
輩へ本能的な暴力を思うがままに行使する柳楽優弥の無目的で、何考えているかわからない狂気の演技。菅田将暉の初め腰抜けだが腰巾着となって、段々と弱い者に暴力を振るって増長してゆく小物感。顔面をぶん殴り、殴られまくる暴力描写は、痛痛しく、更にひたすら「ぶざまに」作り込まれているのが良い。特に、ミラーに叩きつけられる頭!頭!
ヒロイン・小松菜奈がある意味ハマリ役だけど、最終的に物語上活きなかったのが少し勿体無い気もする。暴力を抑えるタガが外れた不吉で、おぞましい出来事が、平穏な田舎の市街地で突発的に展開されるのはギャップがきいている。

序盤で圧倒され、中盤までは、話がどう転ぶかわからない不穏さと菅田君の台詞にある「何かでっかい」ことが起こりそうなワクワク感で一杯だった。ラストは、すごく象徴的なもので、この物語に相応しい終わり方ではあるが、個人的には、それまで本能の赴くままに行動していた柳楽優弥に、葛藤なり、弟君が関わってくるなり、一変化が見たかったかもと感じた。

荒削りながら、荒々しさがかえってエモーショナルで、好きな部類の映画だった。そして、真利子監督には、今後、勝手な希望だけど、新井英樹作品を実写で撮って欲しいとも思う。