yumeayu

ディストラクション・ベイビーズのyumeayuのレビュー・感想・評価

4.0
全編にわたって暴力描写が凄まじい。
人を殴る渇いた音が生々しく響き、息つく間もない程、常に殴り殴られのシーンが続く。

「オラぁ、わくわくすっぞ」
某漫画の主人公のごとく戦うことが全て。柳楽優弥演じる泰良は誰構わず喧嘩を吹っかける。
最初は特段強い訳でもなく、ボコボコにされることもしばしば。しかし、修羅場を潜り抜けるたび、学び強くなるその姿は前述した某漫画の戦闘種族のよう(笑)

幼い頃から両親もいなく、閉鎖感漂う田舎町で屈折して育った泰良にとって、暴力こそが生きている証なのだろう。
目をギラつかせ獲物を探す姿はまさに野生動物そのものだ。

一方、菅田将輝演じる不良高校生の裕也や小松菜奈演じるキャバ嬢の那奈も、泰良と同じように心底にどうにもならない閉鎖感を抱えている。
しかし、彼らはそれを開放する術を知らない。だから、どうしようもない行為で気を紛らわせることしかできない。小物感が漂っているのもそのせいだろう。
でも、それは観客である僕らも同じ。日常のストレスやわだかまりを社会のルールと理性で抑え込んでいる。

だが、泰良にはそれがない。
現に彼と共に行動するようになってから、裕也も那奈も理性のタガが外れ暴力的になっていく。
泰良がやっていることは明らかに犯罪だし、褒められることではないが、己の衝動と欲望に正直な姿には不思議な清々しさを感じた。
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