スローターハウス154

ヒトラーの忘れもののスローターハウス154のレビュー・感想・評価

ヒトラーの忘れもの(2015年製作の映画)
4.5
2017/8/20

戦後まもなくして、憎しみの対象となり時代の負債を後片付けさせられた子供達が確かにいたんですね。。
その事実を知っただけで開始5分からもうキツかったねえ...

少年兵達には憎しみを向ける対象が無い..という事の残酷さ。どこにも感情のやり場がなくて、黙りこくってコッソリ涙を流すことしかできないんだよね....
対して、ドイツや少年兵達を憎むことで秩序を保つデンマーク側...そういう立場もわからなくは無いのがまた、何ともいえない気持ちにさせられる(いや、軍曹以上の役職の行為には同情できないけど)。
色んな立場から戦争が残すものを考えさせれる。

爆死していく友を見送りながらも、弱音を一切吐くことなく優しさと冷静さを保ち、自然と少年達を引っ張っていく主人公。鬼軍曹ですら彼には一目置く存在となる。
こういう仲間うちで"正義"な主人公が出てくると、対象的な"悪"キャラ(いや今回はちょいワルくらいだけど)が出てくるのは世の常、物語には欠かせない要素なんだけど、そういう時いつも思うのは僕だったら"悪(ちょいワル)"キャラ側の立場だろうなと。だから主人公に反発するふて腐れた感じのヘルムート君には特に感情移入しました...

ラストは制作側の祈りだろう、という現実的なレビューをどこかで読んだ。ああきっとそうかもしれない。でもああいうラストじゃなきゃ、きっともう観返そうとは思えないよ。実際の大多数の少年兵たちはきっと...。

そうそう、少年兵達の監視役を勤めるデンマークの鬼軍曹演ずるローランド・ムラー、とても良かった。少年兵への扱いが何度も手のひら返しするように変わるんですよ。彼らへの憎しみと同情、そして自身の立場によってせめぎ合う複雑な心中の演技が大変良かった。色気あるカッコいいオッさんでした。

何度も見返してシッカリと記憶に焼きつけたい映画だった。素晴らしい戦争映画。みんな観て色々考えよう。。