うめ

ヒトラーの忘れもののうめのレビュー・感想・評価

ヒトラーの忘れもの(2015年製作の映画)
4.3
劇場で観たかったのですが間に合わなかった。
やっと少し前に観れたのですが…
気持ちを整理するまでに時間がかかりました。

どんな映画でもそれなりに楽しめてしまう私ですが、それでも呆れてしまう事やガッカリする事もあります。
しかし、怒りを覚えたのは久しぶりでした。
とは言っても、それは作品に対してではありません。
邦題をつけた人に対してです。
ドイツ軍が埋めた地雷を撤去させられる少年達。
非人道的な兵器を埋めた責任は確かにあったとしても…
命をかけるのは、辛い時代に希望を与えられる唯一の存在である若者。
それも言われるがままに連れて来られただろう少年達なのだ。
それなのに「忘れもの」?
実際に観てつけたのだろうか?
その無神経さがどうしても許せない。


一度、戦争になってしまえば…
どちらも加害者で被害者だ。
その怒りを拭いさる事なんて出来るはずがない。
誰でも持っている良心と怒り。
二つの間で揺れ動くデンマークの軍曹の苦しさに胸をかきむしりたくなる思いだった。

誰が悪い。
何が悪い。
そうだとしても、全ての事は単純ではない。
みんな苦しくて辛くて、何かにぶつけなければいられない。
戦争は終わっても、何も本当は終わらないんだ。
それを、極めてニュートラルな視点で作られている傑作。

希望、夢、絶望を語りながらも…
少年達の目に宿る諦め。
軍曹の目に宿る虚無。
しばらくは、私の心に絡みついたままだろう。
うめ

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