垂直落下式サミング

レディ・プレイヤー1の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

レディ・プレイヤー1(2018年製作の映画)
3.5
悪の親玉の最終兵器として登場するメカゴジラは、頭部のイカツさはVSシリーズ、リアリティのある装甲は機龍、そしてフォルム全体は初代のずんぐり体型と、三世代の機体それぞれの特徴に寄せた要素が混ぜ込められており、メカゴジラ愛に溢れている。気がする。
画面の明瞭さ、懐メロBGM、そしてVRによって繋がる広大な電子の仮想現実世界と、昨今の映画のトレンドを積極的に取り入れながら、今後はそれが主流になっていくであろう最新技術もSF映画の世界観のなかでみせる。
2002年の時点で、今では当たり前な液晶タッチパネルを描いてみせた『マイノリティ・リポート』も先見の明があったが、本作の現実味を帯びた未来予言となり得るのは、飛行ドローンによる宅配システムだ。10年後か、もっと早くに、全世界でこの運送形態は実用化されているかもしれない。
ストーリーは、王道の冒険映画としては面白くみれたが、同時に今が円熟期であろうスピルバーグ大先生に過剰な接待を強いているような気がして、なんだか居心地が悪かったというのが本音。
『ジュラシックパーク』や『インディジョーンズ』もやるけど『シンドラーのリスト』とか『ブリッジオブスパイ』もやる。当てる題材で稼いで、その金で好きな映画を撮り、また当てる。この両輪がスピルバーグの映画ビジネスだ。
本作は娯楽作路線で比較的あっさり風味。マイケル・ベイに任せている『トランスフォーマー』シリーズがマンネリ気味で、子供向けに撮った『ビッグフレンドリージャイアント』も見込みより稼げなかったので、今後10年を食い繋ぐために、本腰を入れて確実に当てにいったという感じのスタンスなのではないでしょうか。
本作について、よく取り沙汰される80年代ポップカルチャーへの愛だとかは、別に知識があればあるで困らない程度の要素だ。みといたほうがいいのは『シャイニング』くらいで、スポーンがいるとか、チュンリーがいるとか、ビートルジュースがいるとか、そんな知っとるけ競争は知ってる奴が勝手にやってりゃいい。スピルバーグ翁がオーバーウォッチやヘイローなんか知ってるわけないしな。
過去をかえりみて懐かしんだり、現実の不安を取りこぼさずに受け止めてくれるような優しさを、私はもう映画に求めていないということを本作をみて再認識した。