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ザ・ギフトのmのレビュー・感想・評価

ザ・ギフト(2015年製作の映画)
4.7
俳優が監督・脚本・出演を兼任した作品を観ると、ついその作品自体や当人が演じる役柄にその人自身の願望や経験、感情が色濃く反映されていると妄想してしまう(そしてそれは時にかなり当たっている)。そういう視点からこの映画を観ると、ジョエル・エドガートンという人が筋骨隆々な見た目とは全く違う、かなりの弱さが核にある人なのだと強く感じられてそこが猛烈に面白い。

初監督とは思えない一流の演出力によって語られるこの映画は、ジェイソン・ベイトマンの人物造形の割り切りっぷりを見れば分かるように、人間の曖昧な複雑さから来る割り切れぬ人間ドラマではなく、嘘によって植えつけられた疑念に虐げられた人間がやはり嘘を凶器にして疑念を植え付ける事により果たす復讐劇を嬉々として描いている。そのあまりに嬉々とした粘着質の緊張感と厭な感じに、監督・脚本・出演のジョエルの過去のトラウマとそれを己の映画にフル活用して恨みを晴らす様を勝手に幻視してこちらも嬉々として愉しんだ。

細やかな表情の変化(特に前半)で感情を巧みに伝える俳優陣や、撮影等のスタッフワークもお見事。
視点をスライドしながらやがて真の主人公へと辿り着く構成と、それをスムーズに見せる監督の手腕に感嘆。

ゆっくりねちねちと歩みを進める前半がやや長く感じられるのと、復讐相手の人間性への割り切りっぷりがこの映画の弱点かもしれないが、個人的にはそこもまた愉しかったりする。
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