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アルタード・ステーツ/未知への挑戦の消費者のレビュー・感想・評価

4.5
・ジャンル
SF/サイケデリック/ボディホラー/スリラー

・あらすじ
精神分裂の特殊薬の研究をしていた生理学者のエドワード
彼はその中で罹患者の多くが宗教的な幻覚を経験している事に目を付け新たな研究を開始した
感覚剥奪の実験である
当初、彼は勤め先の大学で生徒達を実験台としていたが彼らの見た幻覚に興味を抱き自分を実験台にする様に
やがてエドワードはメキシコに発ち先住民の使うキノコを元にした秘薬にも手を出しより強い幻覚を体験する
彼は帰国後も持ち帰った秘薬を使い続けたが、なかなか思う様な成果が得られない
そしてとうとう感覚剥奪との併用に手を出してしまう
しかしそれは幻覚だけでなく彼の体にも変化をもたらしていき…

・感想
ジョン・C・リリー博士による感覚遮断実験での変性意識状態をモデルとしたSFホラー作品

題材が題材なだけにサイケデリックな映像の数々がとにかく凄まじい
キリスト教的世界観から太古の世界、そして人体の中、と移りゆく幻覚の数々は’79年の作品とはとても思えないほどぶっ飛んでいた
しかし本作の魅力はそれだけではなく原始的な幻覚がエドワードの体にもたらす変化が予想外だし興味深い
作中で使用されたのは感覚遮断の水槽とヒンチ・インディアンという先住民の扱う幻覚性のキノコだったがどちらかと言うと幻覚の内容からしてアヤワスカに近い効果が描かれており、それがもたらす“退化”も発想として実に斬新だった

加えて面白いのは“退化”のみで終わらせず最後の実験の結果がより王道のサイケらしい方向へと突き進みながらエドワードが「信仰を捨てた」と語っていた事と繋がるキリスト教の否定に辿り着いていた点
そしてそれは本作の監督、ケン・ラッセルの過去作「肉体の悪魔」とも通ずる物がある
更に言えばエドワードとエミリーの見た“恐怖の深淵”と“無”の世界はニーチェ的でもあったりと哲学的な要素もある

ボディホラーと言うと真っ先に浮かぶ物にデイヴィッド・クローネンバーグ監督の諸作品や「ザ・フライ」等がある
そのどれとも違う世界観が極めて新鮮だった
現代の技術でリメイクしたらどうなるんだろう?と思ったりもしたけどこの境地を超える事は恐らく難しいんだろうな…
日本だと難しい事だけど何かキメて鑑賞したらどうなるんだろう?と興味が湧いた
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