ベイビー・ドライバーのゲレゲレのネタバレレビュー・内容・結末

ラ・ラ・ランド+カーチェイスだなんて前評判が散見されたが、ラ・ラ・ランドよりよっぽど「音楽映画」であった本作(そもそもラ・ラ・ランド自体ミュージカル要素が薄めなので余り比較対象として正しくないと思った)
何より選曲が渋い。どれも名曲と言えば名曲だが、数多ある過去の名曲の中で一歩外した感というか、玄人好みなチョイスがベイビーの音楽好きっぷりを演出している。ブライトン・ロックがその最たる例で(フツーウケ狙いに行ったらDon't Stop Me Nowとか選びそうなものなのに！)ベイビーの一番好きな曲として一度軽く再生させておき、この曲の役目はもう終わりなんだなと視聴者に認識させておきながらのラストバトル！この映画はボヘミアン・ラプソディやWe Will Rock Youではなくあくまでブライトン・ロックなんだ！と突きつけられたかのようだった。感覚的な話で非常に伝わりづらいのは承知しているが。
2時間という枠でテンプレといえるシーンを極力排しているのも好印象。デボラが覚悟完了するまで、ボスがベイビーに感化されるまで、といった通常ならそこそこ尺を割きそうな部分を1秒で済ませてしまうのでストレスフリーだった。結局その手のストーリーラインは始終同じような話になりがちなので。思い返してみると時間にゆとりを持たせた分、伏線の張り方が丁寧というか何気ないシーンもしっかりと後で活かされているのは素晴らしい。
あと役者は役柄にピッタリあった顔つきというのがいい。単純に美男美女を揃えたわけじゃなくベイビードライバーという世界の中でまさに生きている絶妙な配役だ。
この作品を見終わった後どこか懐かしさを感じてしまうのは、批評する能力を持たない子供の頃に見た名作と同じような気持ちになるからかもしれない。つまり自身の中に生まれる揚げ足じみた批評を全て跳ね返してしまうような、非常にパワフルな名作だということ。