間接照明

ベイビー・ドライバーの間接照明のレビュー・感想・評価

ベイビー・ドライバー(2017年製作の映画)
4.6
音の3要素には「大きさ」「高さ」「音色」が、音楽の3要素には「リズム」「メロディー」「ハーモニー(和声)」があると言われてます。

改めて思い返すと、音も音楽も、どちらの要素もすごく生かされてるなあと、ただアップテンポの音楽を盛り込んでる訳ではないなあと感じる作品。

映画の中には音や音楽が散りばめられていて、「レ・ミゼラブル」や「ラ・ラ・ランド」とはまた変わって、音楽のみならず、たくさんの「音」を丁寧に扱っている感じ。


音が人に与える影響ってとても大きい。

自然と始まる貧乏ゆすりなんかも、身体が安定を求めて一定のリズムを生み出す動作。呼吸や鼓動のスピードも密接に繋がっている。ゾウとネズミの一生の心拍数が同じっていうのも不思議。

この作品では、そんなたくさんの音が無意識に語りかけてる。

ハンドルやアクセル、ブレーキ…そんな操作音を切り取ったかと思えば、聾唖なおじいちゃんとのワンシーンもある。ただ音を詰め込むんじゃあなくて、スポットの当て方がほんとにすごい。後半飲み込まれるやうに最後まで観てしまう。


一方で、カメラフレームだったり、色の使い方もとってもステキ。なんというか、シンプルで美しい。敢えて人を映し込んだり、逆に無機物にシーンを当てたり、「その構図で撮るか…!」と感嘆してしまう。
アクションにばかり力を注いでいる訳ではなくて、ゆったりとした時間の魅力や、そのシーンの雰囲気をカメラワークやフレーム・背景が上手く描き出している。


「SPEED」や「TAXI」みたいなカーアクション満載の映画は他にもあるし、「DEPARTED」なんかみたいなマフィア系の映画もあるけれど、こんな風に主人公のキャラクターにひたすらスポットを当てたストーリー展開ってなんだか新鮮。
愛とか信念とかそういうテーマをめぐるストーリー…ていうのとは少し違くて、ひたすら主人公の変化をリアルタイムで追っている感じ。
俯瞰的に考えられるような、ストーリーや台本やテーマがしっかりとした映画が好きなのに、この映画はちょっと違う。不思議な魅力。

だから、ただの長いMVにはなっていなくて、映画としての美しさが強く秘められている気がする。

まとまらないけれど、2017で1番好きな映画かも。
間接照明

間接照明