ガーウィグ監督の途方もない才能を垣間見た”ファンタジーコメディ&ちょっとミュージカル”な傑作！
究極にピンク色に拘ったセットデザインと衣装が素晴らしい。劇中で多様なピンク色が使用されているのと同じく、脚本もまた角度で様々な色を見せる。前半はやや説明調になるが、観終わった時、なぜこの作りなのか深く納得した。派手なピンク色の世界観の裏にある真意に気付けば、10000倍この映画を楽しめるはず。
随所に盛り込まれた笑いのセンスも良い。ケンを演じるライアンはオスカー受賞に値する演技力。従来のケンではなく、ある種人間としての深みを加えた人物像が素晴らしい。人間役を演じたアメリカも、誇張されることのないドラマに一役買っていた。映画のトーンも分かりやすい感動もの、恋愛ものとしては進行しない。しかしそれが映画に唯一無二の存在感を与えていて、そして今年最高の映画にまで押し上げている。
まさに今の社会が必要とするメッセージが込められたハートフルで的確な、鋭い一作だった
