イージーライター

バービーのイージーライターのレビュー・感想・評価

バービー(2023年製作の映画)
4.0
まごうことなきフェミニズム映画で本当によくできていたと思う。男性社会の抑圧というものを諧謔的に示唆的に描いている。しかしそう単純に書き示していいのだろうかという思いがあって再見の必要性を考えている。
映画の途中、X世代の女子学生が、バービーを辛らつに批判する。バービーのために女性進出は遅れた。
「フェミニズムを50年後退させ、女性の自信を奪ったファシスト」みたいな感じで。
その論法はよくわかる。わかるけども、その女子学生の描かれ方というのが、私からみると好意的ではないように見える。この描き方がまた、フェミニズムからの批判のありようっぽく、またX世代らしい論法である、といった点で戯画的である。その戯画的というところに、監督のグレタ・ガーウィグの哲学が私には垣間見えるように思えるのだ。性差にあてられた、くびきは解消しなければならない。しかしステレオタイプ、テンプレート見たいな思考、言動には、監督は負の感情を持っているのではないか。
私が思うにこの映画は多くの人の遊び心と正義感とをくすぐるように出てきていると思うが、その正義感というのは、フェミニズムは是であることを前提としたうえで、さらに進めて多様性というものの前向きな価値を提示していることへの共鳴だろうと感じている。その多様性の価値というのは前述のテンプレ思考の戯画化で実は笑い飛ばすことで滲み出されていると思うのだ。これ、まだ咀嚼できていないから、再見する。