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ノクターナル・アニマルズのkrhのレビュー・感想・評価

ノクターナル・アニマルズ(2016年製作の映画)
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自称・現実主義者は何を見た?

「復讐劇か〜すごいな〜」の後になんだか納得できないモヤが残っていたのは、どうやらこれが復讐劇とするだけではないかららしい。
一度納得すると多重的な構造に舌を巻く。
表層の「リベンジ」とその下にある示唆、「気づかない」のは彼女だけではない。我々でもあった。なんという揶揄。。
ショッキングな表現の現代美術ばかりを周りに置く彼女の底の浅さと「リベンジ」の文字にいつまでも引っ張られる我々はおんなじだ。スマホの彼女が言う「いい作品ですよね」で本気で頷くことができる人がいるのだろうか。シンプルなその文字以上にあるものを、我々はなかなか読み取ることができない。だいたい、あの文字を用意したのは彼ではなかったのに。

「ノクターナル・アニマル」と呼ばれた彼女が受け取ったのは「ノクターナル・アニマルズ」。「ズ」とは?彼女の気持ちはどの登場人物に重ねられた?そもそも登場人物は彼女が勝手に当てはめたものではなかったか。何ひとつ通じない犯人たちと、共通項があるのは一体誰(と誰)だった?

ふくよかな女性のプロポーションというのは、西洋美術においてかつては理想的で美しいとされていた。
でも今見る実際のカラダはどうだろう。
あれをなんの戸惑いもなく見れた人はいないだろう。
本来のところで価値を見出さず、逆張りで価値を語ろうとすることの愚かさよ。
果たして彼女は現実を見れていただろうか。振り回されたのは理想と幻想ではなかったか。
美しさを追求する世界で生きるトム・フォードがこれらを語るからこそ刺さりまくっている。。
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