紅孔雀

ノクターナル・アニマルズの紅孔雀のレビュー・感想・評価

ノクターナル・アニマルズ(2016年製作の映画)
5.0
映画館で観終わった直後は、前作『シングルマン』にわずかに及ばないか、と思ったのですが、シネリーブルを出て夜道を駅まで歩いている途中で「それにしてもジワジワくる映画だなぁ」と不思議な感慨に囚われました。その後帰宅して、深夜、(ほぼ十数年振りに)買ったパンフレットを読んでいたら、これは、監督フォードの半世紀の人生の思い(映画の半ばあたりで登場する、ギャラリーに飾られた作品の言葉「REVENGE(復讐)」がヒント)の籠った執念の一作なのだ、と思い始めました。フォードは、その思いを画面に定着するためA.アダムス、J.ギレンホールという男女の名優を招聘し、そして突然の断ち切るようなラストシーンを用意したのだと思います。
ネタバレになりそうなので、持って回った言い方ですみません。ただ私としては、生涯でも稀なほど腹にズシリとくる映画で、点数もできたら「5点+アルファ」をつけたい程でした。
惜しげも無く出てくる現代秀作アート(特に、剥製の黒牛に夥しい矢が刺さるデミアン・ハーストの作品)、脇役たちの名演(M.シャノン、A.T.ジョンソン、L.ニーリーなど一見誰だか分からない程の入魂の演技)、そしてさり気ない小道具(赤いソファ、緑のポンティアックの象徴性)についても語らねばならないのですが、長くなりそうなので、一つだけ付け加えて終わりにします。それはA.アダムスが掛ける眼鏡で、これは前作コリン・ファースの黒縁眼鏡を受け継いでいるとのこと。まさに両作とも、フォード印の傑作なのでした。
紅孔雀

紅孔雀