Miller

あの頃エッフェル塔の下でのMillerのネタバレレビュー・内容・結末

あの頃エッフェル塔の下で(2015年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

人類学者で外務省で働くポール。ポールはパリに戻り勤務することになり、帰国する際にパスポートに問題があると言われる。ポールのパスポートが2つあり、ポールのパスポートを持っていた男は2年前に死んだとのことだった。
自分の分身の死。パスポートをある男に渡した、若かりし日の出来事。成長し、少年から青年にかわる日々。
ポールは思い出す。


かつての恋人エステルとの出会いから、エステルとの別れ。
旧友からの手紙で、かつての恋人エステルとの手紙を読み返すことで若かりし頃のことに浸り、ポールは旧友に対しての返事を途中まで書き綴るが、それを返信するのを止める。
「二人の世界から立ち直れなかった。一種のユートピア、僕の理想だった。
彼女も二人が永遠に続くよう望んでいたと思う。それが最善だった、
彼女がいない人生など無意味だった。」
二人きりの世界でいたかったが、離れ離れになったこと、二人の若さが二人きりの世界でいることを困難にした。
輝くような日々に、暗い影は付随しており、その日々を思い出すことは辛いが愛おしい。


ポールは思い出す。
過去に自分のパスポートを譲り渡したことをエステルに告げた時のこと。
「十代の僕は、ある男に身元を譲った。どこかに僕の分身がいる。僕が分身かも。」
と言ったポールに、エステルは
「本物はあなた。私のあなた。」
と答え、カメラ目線になったエステルのカットで映画は終わる。
カメラを見つめるエステルは、当時を思い出す現在のポールが見つめるエステルであり、エステルの言葉は、現在のポールに向けられた言葉だ。
ポールは、パスポートを渡した自分の分身の死を知り、思い返すエステルとの日々で、本物の自分でいられるのはエステルとの関係の中での自分だったと気が付く。
エステルとの日々に思いを馳せ、そこに取り残されてしまっていた自分に気が付く最後は、儚さの余韻を感じる良いラストシーンだった。
Miller

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