岬

ストーンウォールの岬のレビュー・感想・評価

ストーンウォール(2015年製作の映画)
5.0
ものすごい良かった。いままで見た映画の中でもトップクラスで好きだ。

ダニーはレイが話す明るい未来の想像に相槌をうたない。一貫してうたない。それが残酷で好きだと思った。
慟哭。美しい虚勢。ダンスを踊らないで、私と踊ってほしかった。と、言えないような関係の中で、持ちうるすべての力と身体と知恵をもってレイはダニーを救い出す。それが切なくて頼もしい。

瓶ビール。LSD。盗んだ帽子。肩を組むこと。殴られて泣くだけではないレイとそれを慰めるダニーの身の寄せ合い方。
身を切られるような痛みを伴う言葉が随所にあり、育ちというボーダをふたりでいったりきたり罵倒しあうのが良かった。どちらにとっても手に入れたての愛という感じがした。

反乱シーンもよい。いつもの7人が転がしたパトカーの上で肩を組んで踊っていたところが痛快で素晴らしかった。でも特によかったのが反乱が終わった次の日の朝に、ダニーが「怒りに陶酔した」って言うところ。その時のレイへのセリフはかなりひどいものだけど、なぜか責めるような気持ちにはならなかった。

実際のストーンウォールの反乱とはかなり違うものとして書かれているし、主人公は白人の筋肉質でルックスの良い青年になっているし、反乱の口火を切ったのはトランスジェンダーのシルビアやドラァグ・クイーンのマーシャ・P・ジョンソンであるということが全く無視されているらしいのですが、それを差し引いてもなお私にとっては素晴らしい映画に思えた。
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