フェルメールやレンブラントの絵画を育んだ「オランダの光」についてのドキュメンタリー。現代の芸術家、美術史家だけでなく、気象物理学者にまでインタビューをしていて見応えがある。地平線までまっすぐ見渡せる水に囲まれた平野で、1年間にわたる定点観測の映像が随所に挟まれるが、オランダの冬の朝の光の美しさに心打たれた。灰色の光、強い風、大きな雲。水面に反射して拡散する光が、自然の色彩を明るく際立たせる。
17世紀オランダでは風景画が多く描かれたが、その大家の一人であるカイプの絵画は、ドラマチックな光と影のせめぎ合いが風景に与える変化を巧みに捉えており、イギリスで大変好まれたらしい。クロード・ロランやターナーに直接繋がるものを感じる西日や煌めく水の表現が印象的。
光が影を生み出し、色彩に生命を与え、風景に変化を加える。同じ風景でも、時間帯や気候によって表情を変え、一瞬として同じ景色はない。光を繊細に捉える画家達の視線を介して、自分が普段いかに何も見ていないのかを痛感させられる。泡立つ波に潜む黄色や緑色を、僕はこれまで見たことがなかった。
光に国境はないが、国や地域によって大きく違う。イタリアの乾いた青も僕は好きだし、フランスの印象派の柔らかな光も良い。この映画の中に出てくるオランダの静物画の室内に差し込む光、冬の朝の鈍い光の美しさはとても印象的。外に出かけて、光を浴びて、絵を描いてみたくなる映画。題材がとっても面白い。