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天空の城ラピュタのmitakosamaのレビュー・感想・評価

天空の城ラピュタ(1986年製作の映画)
4.6
今作のためスタジオジブリを立ち上げ、後々の大躍進の偉大なる第一歩ですわ。
とにかく面白過ぎ。少年活劇かくあるべき!宮崎駿もこの時点では物語り作りに素直だったよ。主役側を立たせる為にはキチンと悪役を描くこと。もののけ姫以降に辞めちゃった悪役の配置。
この時期の宮崎は「悪役には一定の美学があり、品位がなくては一流の悪役じゃない」云々と発言してるんだよね。物語上の悪役の存在そのものは否定していない。

この時期の宮崎駿のブレ無さの象徴が、“少年少女に対する絶対的な信頼”だと思う。
手塚治虫と比較するとわかりやすいが、手塚の思想とはズバリ“人の業の肯定”なんだ。人は愚かで罪深い物だがそれでも許そう、と言うのが手塚の哲学。
宮崎は手塚のそういう性悪説的な思考を悲観的だと全否定してる。
“人には生きる力があり、少年少女には未来がある。大人たちはそれを信じないといけない”という性善説が宮崎の基本思想。

だからこそパズーもシータも明朗活発。返事は「ハイ!」と小気味良い。
ドーラは大人として少年少女の夢を信じたから味方になり得た訳で。

また、もののけ以降声優の排除が顕著になるが、この時期はまだ声優を起用してる。確かに声優特有の変な間の開け方や過剰に作った声は耳障りなことが多いけどさ、それでも声優ならではの魅力があるよ。
今作で言えば、シータ救出時のフラップターに乗るパズーの『上がれぇぇぇ!』のクソ格好良いことよ。あの田中真弓の演技は声優だからこそでしょうに。
閣下の永井一郎とか、おかみさんの鷲尾真知子とかも他じゃ出せない魅力だよ。

映画全体としては名シーンが多過ぎて描き切れず。最高すぎる。
千の言葉を駆使しても語り尽くせぬよのぅ。

宮崎・手塚の比較は後のジブリを語る上でキーになるので、他の作品のレビューでも随時触れたいと思う。
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