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20センチュリー・ウーマンのpicaruのレビュー・感想・評価

20センチュリー・ウーマン(2016年製作の映画)
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【変化と更新の話】

『20th Century Women』

『Little Women』の予習として。
監督のグレタ・ガーウィグが出演しているのと、タイトルに惹かれたので観てみたら……

大当たり!!!!!

舞台は1979年、カリフォルニア州サンタバーバラ。
2016年の映画なんだけど、この年に製作された意図にこだわりを感じたし、なにより、今、私が映画と出逢ったことが重要なんだ。
あと一年でも早かったら、ここまで深く感動しなかったかもしれない。

15歳の少年とシングルマザー、そして彼らの周りの人々を描いたひと夏の物語。
ミュージック、ダンス、ファッション……
現代アートのような斬新な映像の中で語られるフェミニズム。
未熟な少年の周りに様々な世代、多様な文化の人間を配置することで、あえて彼の価値観を揺さぶり、変化という名の成長をもたらす。
異なる考え方に対して、丁寧にていねいに向き合う姿勢は、私たちの心も少しずつほぐしていく。

シングルマザーを演じたアネット・ベニングの抜群の安定感。
15歳の高校生・ジェイミーを演じたルーカス・ジェイド・ズマンの初々しさ。
写真家のアビーを演じたグレタ・ガーウィグのジェンダーレスでアーティスティックな魅力。
幼なじみのジュリーを演じたエル・ファニングの内側から溢れ出る美しさ。
そして、大工のウィリアムを演じたビリー・クラダップのこだわりのない余裕が生み出す渋さ。

登場人物全員、演技が上手すぎる……!!
ヒューマンドラマだけど、1979年のドキュメンタリーを観ている感覚になるほど自然で、その新感覚な演出に何度驚かされたことか。

本編は多彩な音楽に乗って進行する。
音楽が不可欠なファクターなんだ。
特にパンクロックの登場は、音楽そのものを体現するように、登場人物たちの日常を転がしていく。
写真家のアビーの紹介でこんなセリフがある。

“故郷サンタバーバラでは皆が朗らかでウンザリした
1973年 NYのアートスクールへ
この街の混沌は彼女を正気にした
『地球に落ちて来た男』を観て髪を染めた”

私のお気に入りの言葉だ。
登場する女性ひとりひとりに焦点を当てると、だれも既存の女性像を演じていない。
可愛い。清楚。純潔。
そういういわゆる“ヒロイン”ではなく、自由に、ときに悩みながらカオスを生きている。
思春期の少年が性について関心を持ちはじめるように、彼女たち自身も女性性について何度も何度も見つめ直す。
アップデートできることこそ、権利である。
そう心に訴えかけてくる。

映画に答えはない。
『20th Century Women』を観て、私はどう変化しただろう。
自問自答する。
問いかけることが大切なんだ、と映画が教えてくれる。
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