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母よ、の白のネタバレレビュー・内容・結末

母よ、(2015年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

A.ペルトの音楽の魅せる静謐な高揚感が相応しく映画に聴き映えである。
マルゲリータは労働問題を撮影する社会派映画監督として現実に向き合う最中で、同時に病床に臥す母親とも向き合っていきながら「母」というカテゴリー(社会性)への態度を研ぎ澄ませてゆく。マルゲリータの母親は研究者として社会に貢献し、明日に希望を持って生きていた。その事実の発掘が、家族という共同体に対するマルゲリータの精神的空洞を埋めてゆきながら、直面する現実(とりわけ映画)のパースペクティブにさえ影響を及ぼす。つまり錯誤の中にあった政治への視点が母親との個人的な関係を通して整理されゆく。「何を考えているのか」とマルゲリータに問われた母親は「明日のこと」だと答える。この発言は複合的な存在としての人間の、最も政治的な宣言である。つまり母親の存在とは娘が描く社会派映画と同様に社会派なのであり、『母よ、』という映画自体もまた社会派なのだということがここで明らかにされる。
技術的技巧としてのリアリズム、そして芸術的様式としてのリアリズムを手玉に取ったような素晴らしい映像の戯れ、編集の力量に唸る。
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