エアール

ブルーに生まれついてのエアールのレビュー・感想・評価

ブルーに生まれついて(2015年製作の映画)
3.8
ウエストコースト・ジャズの代表的トランペット奏者であり、ヴォーカリストでもあり、アムステルダムで亡くなるその時まで数々の名演を披露したチェット・ベイカー。
彼の半生を描いた伝記映画になります。
ベイカーに扮するはイーサン・ホーク。
これがめちゃめちゃ良かった〜。

ベイカーの心の支えとなる女性 ジェーンを演じたカルメン・イジョゴも言うことなし
ーーなんだろ、時折日焼けしたジェシカ・アルバに見えてくる 笑
どん底に堕ちたどうしようもない男を
見捨てずに愛で包んでくれる
パーフェクトな女性像でしたね。
オリジナルキャラってこともありますけども、男なら誰でも好きになるでしょうね、これは。


1950年代
モダンジャズ界にて、白人ながらもソフトな歌声と整った顔立ちから女性中心に圧倒的人気を得ていたベイカー
ーーが彼には問題がある。
ヘロイン中毒で喧嘩沙汰も後を絶たず、警察のご厄介になることもちょくちょくなのだ。

自身の人生を追いかけた映画への出演、
妻 エレイン役を好演する売れない女優 ジェーンとの出会いと恋愛、
麻薬の売人に襲われてたことで歯を失い折顎も砕け、まともにトランペットが吹けない状態へと
ーーもとのように吹けることなどあり得ない、トランペット奏者としてもう終わりだ…
ーー入院中見舞客など来ず、長年彼とビジネスパートナーを組むディックにも見放され、
これまで以上にヘロインに溺れていく日々…。
ディックを演じたカラム・キース・レニーも良かったな〜
ラスト控え室でのベイカーとのやりとりは印象深いですね。

堕ちるところまでただただ堕ちてゆくベイカーを献身的に支えるジェーン、
そんな彼女の支えもあり、徐々にベイカーは再起を図ろうと努力し始める
ーーヘロインを断ち、メタドン療法に切り替え、入れ歯をはめて来る日も来る日も”修行”する
ーーどうしようもない男でも
音楽に傾ける情熱と本気の想い、これが魅力なんですよね〜

かつて天才と呼ばれたベイカー、
今やピザ屋で定期的に演奏してる地元バンドの連中に、”もっと練習してきてよ”と言われる始末、
父親との埋まらない溝、
ジェーンとの結婚と彼女のご両親への挨拶、
定職にありつけず
ーー保護観察下、労働時間も不足してる、
ただただ音楽をやりたい、
素晴らしい演奏を、望むところで望み通りにやりたい、ただそれだけなのに…。

技術の衰えが逆に彼にしか出せない
”いい味”を醸す、
名ジャズクラブ ニューヨークマンハッタンにあるBirdland、
好転し始める人生、
そして決断
ーーヘロインとメタドン、恋人ジェーン。


ラストのあの選択、
最後のチャンスかもしれない、
最高の演奏をする自信がない、
無様な演奏しか出来ないのなら死んだほうがマシ。
なによりも音楽を、すべてを犠牲にしてもただただ音楽を。
ベイカーがなにを決断し、なにを捨てるのか…。

彼らしい選択、この一言に尽きますね。
エアール

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