ねきべい

ルームのねきべいのネタバレレビュー・内容・結末

ルーム(2015年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

監禁され、「ルーム」が世界の全てであるジャックとともに過ごす母・ジョイの物語。「ルーム」の中から本当の世界へ踏み出したあと、そこがジャックの全てであったが故に生じるジョイの懊悩や、メディアの心ない(だがある意味では核心をついた)インタビューでさらに苦しむことになる。だが、ジャックの純粋な心や彼自身が成長していくことによって支え合いながら2人で歩んでいくという決意がみられ、心が温まった。最後に「ルーム」にお別れを言うシーンは、今までの世界や過去の辛い記憶との決別を表した象徴的なシーンだったと思う。

他方で、我々は個人の欲望によってしか生きていくことができないのだろうかという疑問が湧いてきた。監禁した犯人やメディア、辛い過去や環境から逃げ出そうと自殺未遂をしたジョイなど、共通するのは「自分の欲望や利己心に従って行動している」ということである。とどのつまり、世界は利己心に満ち満ちた個の集合体であり、ミクロに目を向けてみると自分やその周りの利益になるような行動をとるのが正しいストラテジーなのかもしれない。
翻って、ジャックが髪を切ってジョイにあげるという行動は、母のためを思う利他心によるものである(ジャック自身、母が帰ってきた方が自分にとって嬉しいし都合がいいという利己心なのではないかと考えることもできるが)。こういった欲望と純粋な利他心の対比によって、家族の愛が浮き彫りになり、我々は心を動かされるのかもしれない。
こういったある種キリスト教の隣人愛的な価値観について考える機会にもなるかもしれない。
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