その「部屋」の中にも、確かに幸せは存在した。
ジャックはママと二人で四角い部屋の中に住んでいる。日曜にはオールド・ニックが部屋に来て食べ物を置いていく。部屋の外には宇宙が広がっていて、TVに映っているのも全てつくりもの。
ジャックはそう信じていたが、五歳になったある日、ママはこの外には「世界」があるのだと明かした。そしてママはそこに戻りたいのだと……。
親子で部屋から脱出するサスペンス映画だと思ってたら、部屋から脱出した親子を取り巻く現実が本題だというヒューマンドラマだったとは。
外に出るまでもハラハラして面白かったけど、残りの尺が余りすぎてどうするんや？と思ってたら、普通にこっちが本編だった。
サスペンスより辛い現実ってあるよね……。
非日常に浸っていた間には気づかなかった自分の状況の異常性とか、それに対する残酷な世間の目に晒されて、心が軋むような感覚を覚える。
ずっと髪を切ることもできなくて、少女のように伸ばし続けるしかないジャックが、それをサムソンになぞらえて逆に自分を鼓舞している姿は、ママにとっては救いになったと思うんだ……。
複雑な親子愛を短い時間でよく描けた秀作だと思います！！
部屋の中だからこそ歪でも完結していたママとジャックの関係が、外に出たときにどうなってしまうのか。とても優しい終わり方をしていてよかった。
ただ一つだけ言えるのは、マスコミはゴミ。どこの国でもそうなんだね。
