NARITOMO

ルームのNARITOMOのレビュー・感想・評価

ルーム(2015年製作の映画)
3.9
【出るまでの物語ではなく出てからの物語】

ごめん、全然レビューに関係ないけど、作品に登場する女性警官が今年見た映画の中で1番かっこよかったマジ震えた。全盛期のリーアムニーソンを彷彿させる。笑


で、本題。この映画を鑑賞する前には、息子が部屋を出ることを想定していたし、そこから世界をどう感じ取るのかという部分に焦点があてられるようなものだとトレーラーからは予想していた!!


が、実際に見てみると、世界を知った子どもの視点よりも、
『母にとっての子ども』
『ルーム』(閉鎖された空間としての)


の2つの意味が提示されているように思えて、その隙間隙間に子どもが世界を知った感動がアクセントとして散りばめられていて泣ける泣ける。なんかずっと泣いてたんだけど。笑


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ネタバレちっく 感想

テレビのインタビューで母は考えてしまうのですよね。
「息子だけでも外に出してと男になぜ頼まなかったのですか」と。


なるほど。
そこで母は思うのです、そんなの言うわけないでしょう。この子の母は私だから、私と一緒にいることが当たり前なのだ、と。


つまり、今回の脱出劇の目標は
「子どもだけでも助ける」ではなく、
「一緒に助かる」←つまりある程度健全でありながら同じ環境、同じ世界(ルーム)で生きることが目標だったわけです。
母にとって、息子と一緒の環境でいることは、息子のみの生よりも無意識に最優先にされるものだったのかと。


当たり前のようなんだけど、この質問を通して私は初めてそこで考えたことだし、母にとっても自分では意識していなかった感覚だったからこそ、あの状態まで堕ちてしまったのかなぁと考えたわけです。
(確かにね、この展開で出てくるテレビレポーターってああいう無神経な質問するキャラで描かれるんだけど、そのセリフは人間の触れてはいけないようなエゴをほじくり返すようなものなんだよね。)


そして、レビューの題名の通り、これは出てからの物語。ルームをでたからハッピーではなく、ルームをでても、結局環境によって強いられる視線、それによって世界はまた閉ざされたものであって、全てが解放されるわけではなかったわけでした。悲しいな。息苦しいな。結局私たちが本編を見るまでに予想していた(悪い意味での)『ルーム』と変わらない『ルーム』ができちゃってんじゃん。


あれだけ出たかったルームのはずなのに、皮肉にも精神的状態はあのルームの時よりも堕ちてしまうし、むしろルームでは絶対にありえなかった環境、つまり息子と離れてしまう状態にまでなってしまう。見ててまじで辛たん。


ただ、息子にとっては大人たちが複雑に、そして雑多にする環境、その外の世界にいるときには、前のルームのベッドが恋しくなってしまう、、うーん、、なんとも皮肉なわけです。


こんなことボヤいてたら、ただのクソ暗映画に感じるんだけど、これまた暗いテーマだからこそ、この子どもの演技が映える映える。どうしたらこんな演技が出来るんだろうなー。言葉や文化が違うからすごく見えちゃうのかな?もう天使だよなー。


そう、このクソ暗いテーマの中で、出来すぎた息子の言葉や表情で涙腺をちょいちょいいじってくるわけで、私たちも仄暗い世界をこの子どもの目を通して覗くことで、日々の有り難さとが感じるんだよね。
ただ、ちょっと独白とかも出来すぎちゃってるところがいただけないけど、それをカバーする演技があるおかげで、感動できまくる作品になってるんですよ。


あぁー。なんかずーっと泣いてた。
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