Kororin68

マダム・フローレンス! 夢見るふたりのKororin68のネタバレレビュー・内容・結末

3.0

このレビューはネタバレを含みます

自分の音感の破綻に気づいていないマダム・フローレンスが、コンサートを開き、レコードを出し、最後はカーネギーホールでソロリサイタルをする。
実話ベース、ということもあり、見方は様々な口コミ。

確かに、「こんなヨイショで幸せか?」って思っちゃうし、夫の「愛」に、ニセモノ臭さを感じてしまう。
でも、彼女は、といえば…

Wikipediaなど調べてみて、気づいたこと。
幼少は、天才的な音楽の才能を発揮していた(つまり「天性の音痴」ではない、ってこと)。
18歳の初婚で感染された梅毒は、彼女の音感も、ピアノを弾く力も、健康も損なって、絶望的なことだったろう。
自分の音楽センスの破綻は、どうやら気づいていたらしいです。
それでも、歌が好きだし、他者の音楽も支援しつつ、自分もちょっとそこに混ざりたい。
カーネギーホールのコンサートは、彼女から言い出したんじゃなく(ずっと彼女は大コンサートを拒んでいた)、周囲からの熱望に押し切られての開催だったそう。
そして、その一ヶ月後に死去。

「ピアニストという蛮族」って言葉もあるように、音楽界(芸能界もスポーツ界も)は、「美しさ」を装ううわべの皮一枚下に、嫉妬・競争・情報戦・コネ・金の醜悪なドロドロがある。
マダム・フローレンスも、お金の力で、ではあるけれど、誰かを貶めて「名誉を金で買った」より、誰もがやってる範囲だったんでしょう。
彼女は、歌いたくて、音楽が好きで、楽しんでいたんだろうなぁ~~。
それが、今でもカーネギーホールのアーカイブでナンバーワンという位置になっている理由だろう。

また見ることはないでしょうが、忘れられない歴史が心に刻まれた気がします。
Kororin68

Kororin68