若いバイト娘（島明海）から好意を抱かれているバー経営者の中年男（悪源太義平）が、魔性の女に変貌した元恋人（丘尚美）に惹き寄せられてしまう。「男を惑わす妖力」の恐怖性を描いている、新東宝配給のピンク映画。製作は若松プロ。

男の人生を破綻させてしまう魔性の女、危険だと知りながら魔性に飛び込んでしまう男、大人同士の性行動に感化される若輩者という、ポルノ映画の三原則をバランスよく盛り込んでいる作品。

東映ピンキーでデビュー以来、成人映画の世界を渡り歩いてきた丘尚美が、緊縛行為を活力としている、性に貪欲な女を好演。迫力のボンデージ・アートを披露しており、"その場で咲きなさい"の精神がひしひしと伝わってくる。

「おかしいでしょ、女なのに荷物はこれだけよ」と漏らすシーンがあるのだが、たぶん荷物の中身は緊縛用の縄だけ。"恋焦がれて身をやつす"を地で行く、性のドラマを存分に味わうことができる。

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新宿ゴールデン街でかつて愛欲関係にあった男女が再会して寄りを戻すも、それが悲劇を巻き起こす…。制作を担当する若松孝二や監督の高橋伴明が当時フィールドにしていたゴールデン街を舞台となる主人公が経営するバーをはじめフィーチャーした一作(あるいは若松プロダクション周辺で全て撮影して予算を抑えたと言うべきか)。

冒頭でのトイレでのファックシーン、四畳半で繰り広げられる濡れ場など全体的に狭苦しい場所で男女の行為が営まれるので、汗や便所の匂いがひしひしと伝わり虚飾のない生のエロスをダイレクトに体感できる。これぞ自主制作に匹敵するくらいの最低な予算で映画を作っているピンク映画ならではの醍醐味。

三十を過ぎた男女による熟れた肉体関係が異常な性行為でしか発情しなくなった女の欲求を解消するため、いつしかその行為に二人が仕事を忘れてのめり込むドラマにも若い性を謳歌できなくなってきた作り手の実感が込められていて先のない人生を誤魔化すような彼らには悲哀が滲んでいる。そして当初は男を慕っていた若い娘が、彼が女との愛欲に溺れると同時にその感情が壊れてしまい色々な男との性愛にのめり込んでしまうという展開も苦い。ラストはやや唐突ながら７０年代の作品らしいビターな結末にたどり着く。

東映から日活、香港映画、ピンク映画と色々な映画社会を経験してきたベテラン丘ナオミと、若松監督に女優として見出だされて若松プロを中心に活動するも本人はあまり映画活動に積極的では無かったのか極端に出演作品が少ない島明海の対比も効いておりドラマを奥深くしている。

またラストに全身を縄で縛られたまま刺される岡尚美。終盤の断片的な繋ぎは成功しているのか失敗しているのかよく分からないが、ヤリきってはいるので印象には残る。おかっぱのあいなぷぅに似ている島明海が一人勝ちのような映画で、男を取り合う少女Aと岡尚美という図式も高橋伴明は好きだと思う。