野中知樹

帰ってきたヒトラーの野中知樹のレビュー・感想・評価

帰ってきたヒトラー(2015年製作の映画)
4.6
魅了されてく自分自身にゾッとする映画

デヴィッド・ヴェンド監督、オリヴァー・マスッチ主演『帰ってきたヒトラー』を鑑賞。フィクションでありノンフィクション、コメディーでありドキュメントな映画に鳥肌総立ちだった。

舞台俳優オリヴァー・マスッチが魅せる!
完コピのヒトラー総統

今回主演に起用された主演オリヴァー・マスッチは舞台俳優出身。ヒトラーのリアリズムを追求するため、メディアの露出が少ない彼が起用された。

マスッチ演じるヒトラーはまさに本物。喋り方、手の仕草、歩き方。。。歴史フィルムで見たままのヒトラーの重厚感、威圧感が映し出される。

特に演説のシーンは圧巻。沈黙から始まり、静かに語りかけ、徐々に大袈裟な身振りをまじえて唾を飛ばす。実際のヒトラーもオペラ歌手の演出で演説をしたといわれるが、舞台俳優の彼だからこその共通点があるのかも?



ヒトラーを前に、現代ドイツ人の反応は?

本作は2014年の現代にヒトラーが蘇ったら?という突拍子もないコメディーだが、むしろドキュメンタリーような印象が強かった。それは街ロケのシーン。

ヒトラーに扮したマスッチとテレビマン・ザヴァツキ役のファビアン・ブッシュが実際に街に繰り出し撮影を行う。

街の人は、眉をひそめる、嫌悪感を示す人が大半と思っていたが意外な反応が、、、

移民問題で右翼よりな世論が増えつつあるドイツ。そこに紛れ込んだヒトラーが炙り出す現代ドイツの問題と国民のリアルな反応。もはやコメディー映画の枠を超えたドキュメンタリーだ。

ヒトラーのアジテーションが生々しく聞こえてしまう現代の感覚。またその力強さ、主張の鋭さに魅せられそうな自分自身。

エンディングのヒトラーのセリフに、ふと我に帰り、鳥肌がとまらなかった。

※ちなみに、コメディー要素も面白い。『ヒトラー最後の12日間』を観ていると爆笑のシーンがありますので、まだ見てない方はそちらも是非。
野中知樹

野中知樹