Itsu

帰ってきたヒトラーのItsuのレビュー・感想・評価

帰ってきたヒトラー(2015年製作の映画)
3.0


もし2014年のドイツにヒトラーが再び現れたら…?

ドイツを席巻したベストセラーを映画化した作品。問題にならなかったの?笑

時は2014年。第二次大戦の敗戦や冷戦における東西分割の危機を乗り越え、すっかり民主化の進んだドイツに、ある男が突如復活する。その男はかつて圧倒的なカリスマ性でドイツを独裁し、国家社会主義を掲げ第二次大戦を戦ったヒトラー本人だった。ヒトラーはリストラされたテレビマンとともにテレビ界へ。国民は彼に大注目だったが、誰も彼がヒトラー本人だとは思ってもいなかった…。

AFDなどの極右政党がドイツで台頭しつつある中、ナチズムとはいかないまでもドイツで以降タブーとさえ扱われていたナショナリズムの再高揚に対するシニカルなコメディー映画。笑っていいのか分からないほど際どいシーンも多々あり、バカ笑いすると言うよりはフッと笑ってしまう癖のあるテイストでした。ちょっと小説にも興味が湧きます。

小説よりリアルであろう点は、ヒトラーが国民と言葉を交わす際はそれが映画であると伝えていない点にあります。彼らは皆、ただのモノマネ芸人だと思っています。極右に対する理解や、また嫌悪を見せる人など反応は様々で、かつ新鮮。ドイツのホンネと、複雑な背景により深く斬り込んでいます。もちろん撮影もある意味タブーの部分で進めているので、かなりの問題も抱えたそう。そうわかって観るとよりリアルで興味深く思えます。

ヒトラーを演じた役者は、ヒトラー本人のオフの部分をより観察して彼の特徴を学んだそう。どこか人当たり良く、それでいて引き込まれるような口調と言葉遣いには、役者とは思えないカリスマ性が光っていました。

歴史的にみても世界有数のタブーをイジった作品なので、ただのコメディーとして観るよりは今のドイツの極右台頭を頭に入れながら観ると楽しめるのかも?
Itsu

Itsu