サラリーマン岡崎

ジョン・F・ドノヴァンの死と生のサラリーマン岡崎のレビュー・感想・評価

5.0
ドランの映画は基本的に「母と子の関係性」か「同性愛」がテーマだが、
最初に予告を観た時にどちらでもない新しい領域に手を出したのかと思ったが、
どちらの要素もある、むしろ今までの作品の中で、
彼自身の最新キャリアも物語に入れ込んでいる最高潮にドランらしすぎる映画だった。

それが正に感じられたのは芸能人の「スキャンダル」をテーマにしていること。
彼自身、若く大成し、イケメンでカリスマで、そして同性愛者である。
ジョン自体も同じだが、異なるのはカミングアウトしていないこと。
やはり、同性愛者の1番の強敵は「周囲の目」で、
それが一番体現されているのが「メディア」である。
メディアが人々の考えを作り、人々の秘密を簡単に拡散できる。
だからこそ、ジョンは同性愛者の中でも限りなく極限に孤独になっていたと思う。
カミングアウトはしているが、ドラン自身も同じ様な思いはして来たのだろう。
ジョンが生きていた2006年は同性愛に対してもそこまで考えが進んでおらず(でもたった、14年前…)、
今同じ様な批判が起きたら、そのメディア自体が袋叩きに会うだろう。
そう言った意味で、ジョンの「生」はルパートに引き継がれ、
良い時代になっていく様にドランの願いが込められているのがとてつもなく感動する。
最終的にメディア記者にルパートが話を語るのも面白い。
ある意味、ドランしか描けない題材だ。

そして、ドランが多く描いている「母と子の関係性」だが、
ドランはいつも、根本は母と子とも繋がっているのに、
なかなか正直になれない面を表現している。
究極の孤独の中で、ジョンもルパートも母親に反発をするが、
やはり最終的には繋がっていく結末が、
究極な孤独だったからこそ、感動的に感じられる。

こんなにも、ドランしか撮れないドランの最高潮の作品だとは思わなかった。
何度も観たいし、いろんな人にぜひ観てほしい。