サラリーマン岡崎

四月になれば彼女はのサラリーマン岡崎のレビュー・感想・評価

四月になれば彼女は(2024年製作の映画)
3.8
「愛を続ける方法」がテーマ。
生きるのが不器用な人たちが織りなすラブストーリー。
本当にとてつもなく不器用な人たち。

僕は正直、手に入ったものがいつかなくなってしまうと不安になる感情をあまり持たない。
もちろんただただその場を生きてる阿呆なだけではあるのだが、「自己肯定感」がその不安を和らげ、愛を続けるひとつの要因になるというこの映画のテーマはとても納得がする。

自分も自分自身に自信があるわけではないので、これが「自己肯定感」というものなのか正直わからないが、その場の感情を無視しないというところが重要な気がする。
純粋に「楽しむ」ということを蔑ろにせず生きる(本当に能天気なだけだが)ということは、愛を長続きさせることだけじゃなく、生きやすくさせる上でもとても重要だと思う。
でも、生きやすくなったら、他者への愛ももちろん長続きする。

だからこそ、この映画の登場人物たちはほぼ皆生きるのが不器用な人たちなのだと思う。

藤井風の主題歌がこの映画で一番良いが、
「手を放つ、軽くなる、満ちていく」という歌詞がとても印象的。
手を放つけど満ちていく、やはり少し気を軽くして、楽しんで生きていけば、自ずと満たされる。
他者を愛することは自分を愛することから始まる。
なんと良い歌詞…。この歌を大音響で聴きに行ったと言っても過言ではない。

ただ、この映画は
元カノが元カレに手紙を送る(しかもどうやって住所知り得た?)というホラー映画だし、長澤まさみの行動はとても常軌を逸してるし、すごくはちゃめちゃな設定である。
そして、佐藤健と長澤まさみの間に抱えている問題も薄くしか描かれないし、佐藤健と森七菜が別れる際の感情もわかりにくく、とてつもなく感情移入がしにくい作品である。
そして、世界中でロケをしているが、これもプラハ以外はあまり映画的な意味は特になく、景色が良いだけ。(『世界から猫が消えたなら』のブエノスアイレスもまさにそうだった)

テーマは面白い、ただし、作りはあまり好きじゃない。
川村元気の作品をなかなかまだ好きになれない。