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ジョン・F・ドノヴァンの死と生のNYoLoのレビュー・感想・評価

4.0
見終えた直後は、ドランらしくないな、と思った本作。1日頭の中で寝かせた後の感想としては、初の全編英語、初の大物起用の映画にして思いの詰まった渾身の作品なのかな、と思い直すに至りました。

「あの頃の自分」の分身、そして母親との距離感を掴みかねるルパートに、推しも押されぬ天才子役のトレンブレイくん。母親には子役でも成功し、大人になっても成功しているナタリー・ポートマン。

子役でスターダムを駆け上がった人たちの困難を分かりやすく描いている。

現れた時からスターに見えるけれど、実は誰よりも虚像を作るのに躍起なジョンに、GOTでそれこそスターダムを駆け上がったキット・ハリントン。俺はジョン・スノウじゃねぇ。だけどその看板はなかなか下せない。みんなが見る自分と、自分の知っている自分の間にある不思議な隔たり。そこから壊れていく自分を分かりやすく描いている。

ドランの目にはどう映っているんだろう。

あなたという存在は、それでもわたしの支えだった。いてくれるだけで良かったんだ。

でも心は壊れるよね、それも今はよく分かる。

死なないで。わかってあげられる人は必ずいる。

そんな、すべての芸能人へのメッセージだったりするのかも。



↓↓↓↓以下、鑑賞直後の感想↓↓↓↓


ドラン監督作品はわりかし観ているほうなので、どうしても「テーマ」を探してしまう残念な自分がいる。ドラン印、っていうのかな。

本作も、もちろん母への複雑な感情、性的指向、というパーソナルかつ(今のところ)彼の作品の共通のテーマはあったけれど、それ以上にスターの悩み、みたいなのが前面に出ていて、消化するのに時間がかかりそうです。

考えてみれば、ドランはずっとパーソナルな部分を作品にしてきているので、これもそうなんだろう。子どものときの自分が外から見た世界と、有名になってから自身が感じる世界の、それぞれに辛い部分をリンクさせて描いていたような気がする。上手く重ねているなぁという感じ。

作中でのジョンの亡くなり方がヒース・レジャーのそれと全く同じで、ラストのカットは「マイ プライベート アイダホ」のリヴァーとキアヌそのものだった。きっと、ドランの中で印象的な2人なんだろう。若くして成功した最高の俳優だったけれど、その中にある苦しみに誰か1人でも気づけたのか?そう言われている気がした。

個人的には他のドラン作品ほど響かなかったものの、やはりカットや色合いは美しく、どこも絵になるなぁと唸る。でも大音量stand by meの間からのシャウトは、ちょっと笑ってしまった。やり過ぎだよ〜。
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