NYoLo

オッペンハイマーのNYoLoのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.7
起こってしまったことは変えることができない。私の頭の中を始終その言葉が巡った。
もし彼がこの計画を主導しなかったら
このタイミングで初の核兵器を作らなかったら
もし日本に落とさなかったら

でもきっと、どこかで悲惨な事態は起きていた。絶対。



幼少期を九州で過ごし、小学校の修学旅行は長崎、中学は広島だった私。それぞれの原爆資料館をその年齢で訪れた私には、間接的にだけどダイレクトに、その凄まじさの記憶が残っています。

でもそんな記憶が表層化したのは、原子爆弾を日本に対して使うのか、使うならどの都市にするのか、そんなやり取りが行われているシーンのみでした。この作品はマンハッタン計画のリーダー、オッペンハイマーの人生の物語、そして恐らく、科学者と政治家がこんな風に関わるととんでもないことになるんだよ、というノーラン監督からの警鐘なんではないかと思いました。

戦争が技術を革新的に進歩させる、というのは悲しいけど事実。目的は分かっているけれど、誰よりも先に発明したい、解明したいという科学者の知的好奇心とプライドが、それが人の命を奪うものと分かっていてもそうさせるのだと思う。そしてその発明のせいで、いつまでも世界は脅威に晒され続ける。

でも、でもね、なぁんて感想はさておき、なんですよ!

お話は途中からサスペンスめいてゆく。いわゆるオッペンハイマー事件(という名で呼ばれているのは鑑賞後にWikipediaで知ったのだが)です。これが史実て…すごいなアメリカ。でもきっとこの一件があったからこそ、彼の人生をここまで明確に描けたのではなかろうかと。

それから、超賢い科学者の脳内でに湧き起こる「アイデア」みたいなものを映像化しているのもほんとにすごい。毎回すごいのよ、ノーラン監督。頭の中にしかないものを具現化するのが。夢とか時間とか空間とか、感情までも。ほんのちょっとのシーンで、ちょっとした個性を表現するのもほんとすごい。

今回も、とにかくバランスが良いノーラン監督作品。唯一の被爆国だから、とかそういう感情もひっくるめて、見るべきだと思います。

ただちょっと有名どころ出すぎだわ😆
NYoLo

NYoLo