ドラン監督の作品は核になるテーマは一貫していると思うけど、それを覆う幾重もの殻を剥がすのがいつも難作業。今作はさらにジョンとルパートの二人の境遇が対比しながらも重ねて描かれていることで、よりボヤケた印象。
でも結局のところはアイデンティティの問題や、面倒だけど切り捨てることもできない家族、特に母親との関係に悩み、受け入れて乗り越える自分、というストーリーが、様々なエピソードの積み重ねの先に見えてくる。
ありのままの自分の姿を見せることへの恐怖と憧れ、そしてそれができる世の中になりつつあることへの希望、そういうものが込められた作品だったように思う。