いやー、観る前はばかうけの印象しかなくてそれほど期待してなかったんだけど、これぞ本格SFと言えるような映画だった。
昨今よくある（そしてその方が観客の共感を得られるであろう）リアリティ路線ではなく、はたまたドンパチアメコミ路線でもなく、こういうのこそ純然たるSFなんだよなぁと改めて感じさせてくれる作品。細かい科学的な考証とか結局彼らは何だったんだとかそういうことじゃなくて、半ばナンセンスとも言えるような何か新しい概念や感覚や哲学的な面を描くこのアプローチ。これがSFなんだと思う。そこに人間ドラマ的なテイストを巧いバランスで落とし込んだなぁという印象。「未知との遭遇」や「コンタクト」の名前がよく並んで挙げられるのはパクリとかそういう意味ではなくて、それらと同じような姿勢と熱量で持って作られた作品だということだと思う。そして全編通して映像と音楽が作り出す、無機質で無彩色な中に少しの温かさを感じる空気感も魅力的。
この映画の全てが詰め込まれた美しくも残酷なラストメッセージを、未体験の方は是非。
