このレビューはネタバレを含みます
友人知人から、この建築は何がよいのさ?と聞かれることがある。
いやー、感じたままでいいんだよ、なんて煙に巻くことが多いのだけれどw
もしすべての建物に自分の答えを持てたら、スーパー建築家になれるかも汗
ただ時々、活き活きとそこを使う人のイメージが湧いたり、骨組や設備などの機能とデザインの調和を感じられたりして…そんな時は、あ〜丁寧な設計だなと思える。
こういう面白い瞬間に何度か出会えたからか、今も空間に携わることを生業にしている。
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わたしにとって本作は、それまでと「映画」体験が、がらっと変わるきっかけになった作品。
好きなものについて書く怖さはあるけれど、一度今の思いを残しておきたい。
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突如、世界各地に未知の存在が現れる。言語学者のルイーズは、彼ら?の目的を知るため、意思疎通を図る役目を負うことに。彼らとの交流を通して、ルイーズは新たなことわりに触れていく…壮大で綿密な遭遇、相互理解、そして愛についてのお話。
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「テーマと表現方法の親和性」
ルイーズたちが初めて彼らの船「殻」に入るシーン、没入感のある構図に、自然と身体が前のめりになり、彼女と一緒になって船内を覗き込もうとしていた。同時にわたしの身体が画面に包み込まれるようでもあり、どちらが近づいているのか分からなくなるような…何とも奇妙な映像体験だった。
人の声がこだまのように連なる音楽が、五感を刺激する。まるで伝えることそのものが表現されているかのように…
そして円環…彼らの思考を象徴する円環の表意文字が現れる。また冒頭の出産シーンで「戻ってきて」という台詞から始まるこの物語は、作品の全体構造が円環を成していく。
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劇場そのものも含め、映画に関わるあらゆる要素が活かされて…幾重にも連なる、映画表現の豊かさに触れる機会となった。
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「終着点、いや連なりの一部」
本作の終盤、この先何が起きるか分かったらどうするか?と投げかけがなされる。
それは見通すだけの力で、決して何かを変えられるわけではない。未来は必ずしも明るいものとは限らない。
奇しくも、前述の投げかけに対するルイーズとイアンの答えは、以前観たドキュメンタリーで、認知症患者の方が語っていた心境と同じだった。
諦めるとは、明らかにすること、受け入れることなのだとか…むかし聞いた法話の中で、何故かこれだけが記憶に残っている。
これらを受け入れた先にあるのは、きっとまごころであり、愛であろう。
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・君たちはどう生きるかで、本作と近いテーマが扱われているように思う。
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ルック1.0
シナリオ1.0
役者1.0
深度1.0
映画の面白さに気付くきっかけを与えてくれた本作に深い感謝を…+0.5