竜平

メッセージの竜平のレビュー・感想・評価

メッセージ(2016年製作の映画)
4.5
突如地球の各地に現れる巨大な飛行物体、そして出会う謎の知的生命体。その「彼ら」とコンタクトを取るべく招集される言語学者の女性が事態を徐々に解明していく、という話。

静かに、そしてじっくりと見せていく作風。常に付きまとう「次はどうなる」のハラハラドキドキな空気感と、他のSF映画とは一線を画す雰囲気が非常に魅力的。この時間の流れ方こそがドゥニ・ヴィルヌーヴ節なんだなと、個人的には今作を見てようやく理解。宇宙人との激しい攻防戦、みたいなものは全くなく、全体的になんとも知的で想像力も少し必要とするストーリーと展開。てなわけで軽めに映画を楽しみたい気分の人にはまずオススメしないかなという感じ。地球にやってくる「彼ら」は、これは宇宙人と呼んじゃっていいのかどうか、見終わった後でもまだわからなかったりする。というのも、未知の生命体との交流となんらかのメッセージの解読という話を軸に進んではいくけども、その「彼ら」の正体や待ち受ける結論だけを映画のすべてとはしてない。ラストに至るまでに観客側への様々な問いかけ、訴えかけがあったりする。それは例えば先入観からくる物事の偏った見方とか、「言語」や「交流」を通しての既存の価値観や概念についてだとか。実際に宇宙人のような存在が地球に来たとして、よくよく考えたらそうなるよなと思わされる現実味と設定にも驚く。極めつけはそこに掛かる主人公のヒューマンドラマ。で、なんやかんや言いつつもやっぱりオチの着地点というのも絶妙だったりする。それは「どんでん返し」と一括りには言えない、どっしりずっしりとした何か。全部見て、なんならもう一度見直してようやくわかるこの映画の「仕掛け」というもの。物語の導入部分から最後のシーンまで目が離せない、そんな内容。

んーもうこれ以上は触れたくない。面白い面白くないをもはや通り越して、きっと唸ってしまう一本。最後に、エイミー・アダムスに拍手を。
竜平

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