【トカゲの尻尾にゃ毒がある】
Netflixにて。後回しにして忘れていたら、配信終了が迫ってきたので、見ました。
1993 年のボンベイ爆破事件を、実在の人物を借りて物語る。実行犯らと現場捜査陣との攻防中心に足で追い、ザラザラタッチに仕立てた見応えアリ作。
制作はもう20年近く前になるんですね。それでも事件からは10年が過ぎており、ムンバイのロケ撮影では携帯電話が写らないようにするのが大変だったとか。
五章立てで、元々TVのミニシリーズとして企画されたそう。確かに、章別に分けて見た方が状況把握はしやすい。が、最後で再度“一石を投じる”この構成には映画として納得。
まず驚いたのは、ええ!インド警察がこんなマジメに仕事しとる!ってとこ。感動!(笑)
次に、あのナワさんが、こんないぢめられ役してたんか!ってとこ。でも、下っ端だけど映画をガイドする重要な役なんですよね。彼の驚くべき記憶力(笑)が、実行犯から見た事件の全体像をサラッとおさらいしてくれる。一度じゃ覚えられぬが問題なし。後で効いてくるから。
事件後、実行犯らの砂を噛むようにジリジリした潜伏日記が、焦りと人間味にあふれ惹き込まれる。ちゃんと映画的花火も上がる。個人的前半ベストは、豪足容疑者との「あれほど本気で走るのは五輪か警察の追跡」と言われる徹底チェイス。思わず苦笑が出るレベル。
後半ポイントは、バードシャー(皇帝の意)くんの憂鬱ロードムービー。インド各地を点々とするが、初めからゴールは予想ついてしまう哀しみ。演じたアディティアさん、最近では『スーパー30』が中々強烈だったが、本作の時から、真っ直ぐな存在感があったんだね。
捜査を指揮するラケーシュ副長官の抑えた葛藤も、ちゃんと要所に挟まれ効いている。実在の人物だけど、あの重圧は大変なものだったでしょう。バードシャーくんやマスコミへ放つ決め台詞に、頷くこと何度も。
監督の、対象への距離感を、かなり適切に感じます。だから最後まで面白く飽きない。所詮やっているコトは自業自得なのだけれど、その点はわかる、との共感視点を忘れない。
犯行の指揮者が、実行者を大切にしなかったコトが、綻びを大きくしたんですね。犯罪者にも愛が必要なのだと勉強になります(笑)。トカゲさん 切った尻尾に 追いかけられ。
が、主犯二名は現在も捕まっておらず、バックにかの国があった…とすることにイヤな説得力が。一方、終盤で自首したあの人は、2015年に処刑されたそうでうわ、不条理な明暗!
ガンディーの言葉「“目には目を”は世界を盲目にする」が引用され、その通りだと思うけれど、人間は神の創造物、とする信仰から離れぬ限り、宗教対立は延々と続くことでしょう。自分の神に背く物は破棄していい。ウクライナ侵攻を支持したロシア正教も根は同じかと。
古いせいか、映像はナゼか、懐かしのVHSレベル。が、それがマイナスにはならない映画。むしろ、このドキュメントタッチには、援護となっているのかも。
追いつ追われつ緊迫の中、心の落とし穴を節々開けながら、インドスパイスをしっかり効かせてあります。なかなか中身の詰まった映画体験でありました。
<2022.11.18記>