T太郎

戦場からのラブレターのT太郎のレビュー・感想・評価

戦場からのラブレター(2014年製作の映画)
4.0
1012
戦争映画だ。
タイトルから恋愛映画だと思われるかもしれない。
確かに恋愛要素は少なからずあるのだが、そこは全く主題ではないのだ。
これは第一次世界大戦時、イギリスにおける銃後の女性を描いた物語なのである。

主人公のヴェラは作家志望だ。
当時の女性には難関のオックスフォード大学を目指している。
弟のエドワード、その友人のヴィクター、ローランドと充実した青春時代を過ごしていた。

やがてヴェラはローランドと恋に落ちる。
オックスフォードにも合格して、二人の甘い未来を夢見たりしていたのだが・・・

サラエボでオーストリア・ハンガリー帝国の皇太子暗殺事件が起こり、ヨーロッパは俄然きな臭くなっていく。

そして、第一次世界大戦が勃発。
ローランド、エドワードは、志願し戦地であるフランスへ派兵される事に。
更に、一旦は兵役免除されたヴィクターも戦地へ。

ヴェラは大学を休学し、看護婦に。
後送されてきた負傷兵の看護にあたるためである。

だが、彼女は弟のエドワードの安否を心配し、戦地フランスの野戦病院へ異動するのだ。

1918年、戦争が終わり人々は歓喜の声を上げる。
イギリス中が戦勝に沸き立っているのだが、ヴェラの表情は晴れない。

なぜか。
ローランド、エドワード、ヴィクター、みんな戦死してしまったのだ。
弟のエドワードに至っては、ヴェラ自らが命を救ったにも関わらず、再び前線に送られた挙げ句なのである。

更に彼女は、フランスの野戦病院で、敵であるドイツ兵の看護にあたったのだ。
婚約者ローランドの命を奪った憎むべきドイツ兵。

だが、ヴェラはここでドイツ兵も自分たちと変わらない、同じ人間なのだと気づくのである。

強烈な反戦メッセージが込められた作品だ。
最後のヴェラの演説は、自責の念と虚無感にさいなまれた結果の魂の叫びだと言えるだろう。
ストレートな言葉が胸に刺さる。

いい映画だった。
世界の好戦的な為政者に観てもらいたい作品である。

私はアリシア・ヴィキャンデルが大好きだ。
かなりの親日家だと聞いているし、そんな事を抜きにしても実に魅力的な女性だと言えよう。
結婚したいとさえ思っているくらいなのだ。

そんなアリシアが、出ずっぱりで熱演を見せてくれている作品がこれだ。
実に嬉しい限りである。
テーマは重いが、こんな眼福な作品が他にあるだろうか。
いや、ない。
(あるよ)
T太郎

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