T太郎

マンダレイのT太郎のレビュー・感想・評価

マンダレイ(2005年製作の映画)
3.7
1056
先日鑑賞した「ドッグヴィル」の続編だ。
というより、3部作の2作品目という位置づけらしい。

「ドッグヴィル」については、私の素敵なレビューをご参照していただくとして、ひとまずこの作品を微に入り細に入り解説していきたい。
あまりの素晴らしい解説に、引っくり返らないようご注意願う次第である。

ドッグヴィルを後にしたグレースは、今回マンダレイという南部の小さな町で大活躍をする。

時は1933年。
合衆国の奴隷制度が廃止されて70年が経っている頃だ。

しかし、このマンダレイでは依然として白人による黒人の奴隷使役がまかり通っていたのだ。

義憤にかられたグレースはこの町に留まり、黒人解放、土地や利益の分配、住民の意識改革などを果断に断行していく。

黒人たちの意見を最大限くみ取る姿勢を見せつつ、白人には厳しめに接する。
そう、彼女は実質この町の支配者になるのである。

なぜ、そのような事が通りすがりのグレースに可能だったのか。
彼女には強力なバックがあったからなのだ。
ま、そのあたりの事情は私の素敵なレビューには書いていないので、「ドッグヴィル」をご鑑賞いただければ幸いである。

永年にわたり白人に搾取され過酷な労働を強いられてきたマンダレイの黒人たち。
グレースは彼らに権利と責任、そして自由を与えようと奔走するのだ。

毎夜、“授業”と称する集会を開いて住民たちに民主主義、人種平等、人権などを説いていくのである。

だが、なぜか黒人たちの反応は薄い。
自由になった喜びは全く見出せないのだ。
これにはグレースをはじめ、観ている私たちも拍子抜けだ。

一体なぜなのだ。
どうも彼らには奴隷根性が染みついているようだ。
グレースの行いは、彼らにとってありがた迷惑だったのか。

果たしてグレースは、彼らに真の自由を与える事ができるのか!

そんな物語である。

以上、この作品の概要をさらっと述べてきたが、いよいよ微に入り細に入り解説していきたいと思う。

どうか引っくり返らないよう、足腰にグッと力を入れて読み進めていただきたい。

・・と思ったのだが、どうやら紙面には制限があるようだ。
(ないよ)
実に残念だが、今日はこれくらいにしといてやろう。

ごめんね。
またね。

       蛇足

続編だが、演じている俳優は違う。
グレースとその父親は、ブライス・ダイスハワードとウィレム・デフォーに変わっているのだ。
ニコール・キッドマンとジェームズ・カーンからの変更である。

ブライスは「ジュラシックワールド」でヒロイン役を演じていた女優さんである。
かなり若い。
ロン・ハワードの娘さんらしい。

セット感丸出しのあの演出は本作でも健在だ。
おかしなもので、前回はかなり気になったあの演出が、今回はほとんど気にならなかった。
人は慣れる生き物なのだ。

ラース・フォン・トリアー監督と言えば、私の中では胸糞映画の巨匠という位置づけだ。
胸糞の匠、胸糞職人、胸糞竜王、胸糞のホームラン王、胸糞のM-Iチャンピオン・・
彼に冠される称号は枚挙に暇がない。

「ダンサー・イン・ザ・ダーク」も「ドッグヴィル」も実に素晴らしかったのである。

この作品は黒人差別、アメリカの奴隷制度に真っ直ぐに向き合った社会派な作品でもある。
それだけに前作ほどの物語的な衝撃度合いは低いかもしれない。

だが、よくよく目をこらして観てみると、かなりショッキングな事実をグレースは突きつけられるのである。
前作ほどの派手さはないが、精神的にくる作品だと言えよう。

私のように鋼の精神を宿したうえで鑑賞する事をお勧めする。
T太郎

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