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葛城事件のyukoのレビュー・感想・評価

葛城事件(2016年製作の映画)
4.7
息をつける時間が一秒もないくらい、画面に釘付けになった。エキセントリックで物語的な狂気がそこにあるんじゃない。あるのは、自分が生きているこの世界と地続きの日常に、普通に転がっている家族の狂気だった。

人は理由なく突然に壊れるんじゃない。ボタンをかけ違うようなささいな綻びの積み重ねが、人を壊していくんだと。そこには誰もが納得するような、面白いストーリーなんてない。つまらない、誰も気にとめない、普通の日常の延長のあちこちに狂気の芽が転がっている。

人は誰でもモンスターになりうる。それくらいの想像力を持てと言われているような、切り取りかただった。他人事ではない怖さと圧力がある。

予想を1歩も2歩も裏切ってくる演出に、画面からひとときも目を離せなくなる。ところどころの登場人物の予測不能な会話や意味のわからない行動がいやにリアルで、現実世界では人って全部が綺麗に説明できる行動なんて取らないよなぁと妙な説得力があった。現実の混沌をよく表してる。演出がよく練られていて単なるエンターテイメントとしての映画を越えて、ななめ上の映画を作っている頭のキレる、人間の描きかたのセンスのよい監督さんだと思った。

カウンターくらうんじゃなくて、ボディーブローが地味に効いてくる感じで、ジワジワいやな衝撃がくるんだけど、最初から最後まで画面から目を背けられないのは、自分のすぐ隣で起きているようなリアリティがあるから。役者陣が非常にレベルの高い、プロのお仕事でこの映画に貢献している。ドラマティック過ぎない、壊れてるんだけど淡々とした部分もあってそのバランスが良かった。あとは、食べるシーンが象徴的にそれぞれの人の素の部分に迫ってて良かったな。

揺さぶられまくって、なんかどっと疲れたわぁ、、、
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