一人の男の病んだ心の深淵を見てしまったようで震えた。
街角で少年たちを拾っても触れることは無い。同性愛者であるだろうに、求めながらも自己否定している男の葛藤。街の不良少年が、手に入らないからこそ執着しているようだ。
そんな男が、拒絶され思う通りにならない、ある不良少年に魅了される。男の少年への手厚い扱いからの信頼関係、そして少年への父性への焦がれが根にあるのか、少年の同性への関心は男によって目覚めさせられる。だがこの関係はもどかしいなんてものではなく、悲劇性しか含んでいない。
それは哀れな男の、実の父親との関係に起因してるのかもしれないが、そこまでの事情は描かれていない。実父への憎しみが見えるだけなのだが、男が父親を尾行するその描写は、彼が町で少年を追う描写と重なり合いもする。
男が心を許し、性的に誘惑するかのような少年との美しい場面や、同性愛者として家族や仲間に疎外されてしまう少年の痛ましいまでの愛情があるのだが、
完結した後で無表情にすべてをクリアにしてしまう男の冷め切った心は、永遠に手に入らないものを求める哀しい病に罹っているのか。それとも今までの自分を消し去りたいのか。おそらく前者だと思うが、痛ましさしかない。