鹿苑寺と慈照寺

ガタカの鹿苑寺と慈照寺のレビュー・感想・評価

ガタカ(1997年製作の映画)
4.6
そう遠くない未来。遺伝子操作で「適正」と診断された者が上流階級に登り出世していき、一方で自然妊娠によって生まれた「不適正」と診断された者はその反対の道を歩まざるを得ない未来。
「不適正」と診断されたヴィンセントは知力も体力も劣るものの「いつか宇宙に行く」という夢に執着心、やがて不慮の事故で未来を絶たれた適性者であるジェロームに成りすまし、宇宙局「ガタカ」の局員として宇宙を目指す。

本作には派手なロボは登場しない。そして、宇宙の壮大な光景を見せることもない。あくまで宇宙に執着した男の話。にも関わらずしっかりとSFの世界観になっているのは、「適正」と「不適正」の設定と、それを裏付ける様々な描写(面接や出退勤管理、コンタクトレンズ、捜査方法など)が近未来を感じさせるから。20年以上も前の作品なのに今の時代に観ても古臭さを感じさせないのも素晴らしい。

ヴィンセントが不適正者とバレそうになる場面でも上述した様々な設定や小物が活きていてめちゃくちゃ惹き付けられる。いやあ、マジで面白い。

生まれながらの虚弱体質を努力でカバーする様は応援したくなるものの、夢に執着したヴィンセントの潔癖は見ていてかなり辛い。いつどこで不適正者とバレるか恐怖しながら生活するのも気が休まらないだろうな。

ラストで明かされるヴィンセントとある人物との関係性や、ヴィンセントとジェロームのやり取りも良かった。

特にラストはヴィンセントの気持ちを考えるととても複雑。尿検査をしてくれた検査官を振り返るのは、「本当にいいのか?」という逡巡にも見える。

派手さはないけれど、本作のようなスタイリッシュなSFはめちゃくちゃ好き。
ガタカというタイトルもG、A、T、Cという遺伝子の基本塩基の頭文字から取っているという細部のこだわりも好み。
ついさっきまでこんな名作の存在すら知らなかったなんてマジで僕は何をしてるんだ!!!
めちゃくちゃ面白かった!!!

以下はメモ
________________________________
自然は人間の挑戦を望んでいる

生まれた瞬間に寿命も発症する病気もわかってしまう未来

遺伝子操作を受けているか否かで階級が決まる

有能な遺伝子を持つ者が不幸に見舞われた時その血液は高値で取引される

毎日、爪や垢、抜け毛を処理する。
→適正の世界に不適正の僕が現れないように

病気と偽って帰ったヴィンセントを警察とアイリーンが尋ねる場面で、本物のジェロームがヴィンセントを騙るのはさすがに無理があるのでは?
よく警察を欺けたなとは思うけど、結局のところ遺伝子しか信用してないから騙されるんだろうな。

ヴィンセントがアイリーンと逃げるとき、刑事が「ヴィンセント!」となんで叫んだんだろって思ったけど、そういうことなのね。刑事は弟だったのか。
________________________________