中庭

500年の航海の中庭のレビュー・感想・評価

500年の航海(2015年製作の映画)
4.4
VHSの迷路をさまよう白いネズミと、海までの道筋が漂着物?に塞がれるウミガメの対比。
二重露光の強調は、映像それ自体ではあまり見受けられなかった(当たり前だが高嶺剛の『変魚路』とは違う)。時空を数十年飛び越える、同一方向のカメラのモンタージュにはいちいち至福の瞬間を味わえるし(紐で繋がれた孫が見つめる扉の先で30年前のタヒミック自身が牢獄にぶち込まれるなど)、リフレインの効果(意味を簡単に増幅させるのでなく純粋な反復であり、台詞と声が同じ方法で拡張していく瞬間は何度も訪れる、「二時間前ぐらいにもこれあったな!」という具合に)がタヒミックの因果的采配に彩られた映像宇宙を構成する根本的なところだと言ってよさそうだ。
「ディレクターズ・カット」が始まってからの映画の長さもまたユニークで、マゼランの航路が描かれた透明なシャワーカーテンの奥で孫が水遊びをしている手持ちのショットの素晴らしさなどどう言葉にすればいいか。
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