【チェリーボム解体】
はじめに経血ぽたり。わ、おんなの映画だ。
本作、女であることにずっと引っぱられますね。
ランナウェイズはそもそも男に作られ、女を売りにしようとしていましたが、そこを突き破りたかったのがジョーン・ジェットで、男に従っても嵌れなかったのがシェリー・カーリー。
この違いが悲しいほど明らかで、バンドの行方も左右したんですね。ジョーンは自分のやりたいことがハッキリ見えていて、とにかく走りたい。実際に作中唯一、彼女だけ疾走しますね。見ていてキモチよく、カッコいい。
逆にシェリーは、バンドに入っても、愛する対象が見つからず彷徨うばかり。でも、ふつうの女の子ってこんなもんじゃないですかね。頑張って、背伸びしようとしていたところが痛く、健気に思えました。
クリステンはジョーン役に嵌ってお見事でした。女性監督ゆえの直球さか、メンバーへのエクスタ指導や、聖水ぶっかけまで披露してカッチョイイ(笑)。私的には、ダコタちゃんの未成熟な違和感の方が、心に残りましたが。
ランナウェイズに足りないのはバルドーだ、とスカウトされたはずの彼女、バルドーみたいな濃厚フェロモン、ちっとも出てません。「ちんこで考えた」結果、例の下着姿にまで至りますが、あの黒パンツって、私には体操服のブルマーに見えちゃいました(笑)。
でも、この違和感や歪さが、けっこう、本作の肝だと思っています。バンドの崩壊要因が、はじめからずっと透けているんですね。
シェリーはジョーンと違い、どうしても音楽をやりたいわけではなかった。チャンスを与えられ、虚像を演じていたのでしょう。冒頭で「成り切りボウイ」を演じていましたが、あの延長なんですね。…実際のシェリーがどうだったかは、詳しくないのでわかりませんが。
そんなこんなで、映画全体としては、爽快感は薄かったですね。
で、面白い断片が集まっても、それが炸裂するように見えて、中々ならない。でも、ランナウェイズの歴史をみれば、そういうことなのだと思います。やはり実在の人物を描く上での、大人の事情も色々あったのでしょうが。
あ、そうだそうだ、来日時のエピソードで、日本の熱狂的女子ファンが、まるで『ブラックホーク・ダウン』の民兵みたいに群れをなし、「襲撃」をかけてくるところが、けっこうマジで恐ろしかったです(笑)。
<2011.11.24記>