ふじこ

コインロッカーの女のふじこのネタバレレビュー・内容・結末

コインロッカーの女(2015年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

生まれてすぐにコインロッカーに捨てられていた女性イリョン。
入れられていたロッカーの番号が10番だったから、イリョン(10)。

浮浪者の間で育てられていイリョンは、悪徳刑事によって奪われ借金の形としてオモニ(母)に差し出される。戸籍がない為に利用価値があるのではないかと。
その母マ・ウヒはイリョンと同じような子を育て独立させ各所へネットワークを広げる、裏社会に顔の利く闇金業・臓器密売等を生業にする悪人。
彼女の元で働く若者たちは、ウヒの事は母、先輩の事は兄や姉と呼んで偽物の家族として揃って仕事をしていた。

いらなくなったら、役に立たなくなったら殺す、と言い聞かせて育てられたイリョンは従順で優秀な取り立て屋として働いていた。
ある日取り立てに行った家の青年パク・ソッキョンは一見借金とは無縁そうで爽やかな男であり、取り立てに来たはずのイリョンにも食事を作ったり傷の手当をしてくれる。
彼の返済する借金は実際には彼の父のものであり、国外にいる父親の代わりに彼に返済を要求する事になっている。彼は父親の事を信じ切っており、借金を押し付けられて見捨てられたとは全く思ってもいない。
今までこんな純粋な人に出会った事がないのか、裏表なく優しくされた事がないのか、イリョンは動揺して家を飛び出し、母にも嘘を吐いてしまう。

パク・ソッキョンと映画へ行ったりご飯を食べに行き、将来の夢はパリで料理を学び、いつか自分の店を持ちたいと笑う彼にイリョンはどんどん彼に惹かれていく。

と言うお話。選択肢なく悪の道を歩まざるを得なかった女性と、そんな彼女に恋を教えた青年。の、素敵な胸キュン少女漫画ではなかった。そんな話なら興味なかった。
爽やか青年パク・ソッキョンはこの後まぁまぁ早く死ぬ。父親が逃げた為に、彼自身の臓器で借金を支払わなければならず、イリョンの目の前で母に殺される。

優しかった兄、知的障害者だけれどイリョンに懐いていた弟もイリョンを追う内に相打ちで死亡、仲の良かった姉も薬物の過剰摂取で亡くなる(たぶん)。
母の元から独立した男も母との権力争いに破れて死に、死ぬ前に依頼した最初にイリョンを連れてきた元刑事はイリョンを攫うも返り討ちにあって死亡。

元刑事を母の差し金と思ったイリョンは母を殺しに家に戻る。
みんな死んだ、と言うイリョンに、母は人の殺し方を教え、自分を刺し殺すように促す。
差し出した包丁を刺された母は遺言とコインロッカーの鍵を残して息絶える。
かつて母もまたその母を殺したと語り供養をしていた事、その時の事を思い出し、次は自分が母の後を継ぐのだと泣きながら笑う。

母が残したコインロッカーの鍵は10番で、中には母との養子縁組の書類と、同じ名字のマ・イリョンとしての住民登録が入っており、何処にも存在しなかった子供であったイリョンは母の後を継いで仕事を続け、かつての母と同じように自分が殺した母を弔うところで終わり。


う~んこれは韓国ノワール、って感じ。
イリョン役も母マ・ウヒ役もどちらも知らない俳優さんだったけれど、良かったなあ。
特にイリョン役の女性は厚ぼったい瞼で眠そうに見えなくもないのにソリッドな感じの役がぴったりだった。
裏社会の女性が恋に目覚めて…まではありがちな感じなんだけれど、ほぼ裏社会のみで話が展開するし、母がかっこいいのだ。完璧に悪なんだけれど、自分自身をちゃんと知っている感じがする。
そうしなくても良いはずなのに、イリョンに継がせると結構前から考えていたようで、そしてそれには自分を殺して貰わなければならない、と決めていたようだった。儀式と言うか、裏社会でしのぎを削る覚悟、みたいなものが必要だからだろうか。怖すぎる、一子相伝の秘術みたいだ。
話だけサラッとなぞるとチープすなぁって思っちゃうんだけれど、これは実際観ると思わず引き込まれてしまってホラー以外の韓国映画も良いね、って思った。
ホラーとサスペンス…バイオレンス、辺りは観ていこうかなあ。
ふじこ

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