満席のイメフォの最前列で見るというより見上げていたが、面白いことが絶えず起きていて、ずっと見ていられる映画だった。教育テレビとかで延々流してほしい。かつてのサイレント映画を表面的になぞるのではなく、アクションと構図を真面目に作り込み、ストレートな娯楽として復活させているのが素晴らしい。
あらゆるコミュニケーションは騙し絵、砂上の楼閣に過ぎない。表現を生きる糧にしている人々は、ギャグが終われば関係も途切れてしまう。離れてはくっつきを繰り返すヨーヨー、二面性と反復のモチーフが貫かれた親子。黒スーツに白い帽子の半端者は、誰かを見送ってばかり。最後まで寄り添うのは、白黒の枠に収まった2台の姿見と、サーカスの動物だけだ。
過去の映画や歴代コメディアンへの敬意を込め、豪華な邸宅を復活させたヨーヨーだったが、それらを受け継ぐには孤独を伴う。父の背中を追うように、映画は少し不思議で切ない終わりを迎える。
老いた父親はもはや体を動かせず、カメラの視点そのものに変わる、という演出も凄い。ヨーヨーが子どもの頃、初めて豪華な車内を見た時とは逆の視点、今度は父の目線から子を見送る形になっている。