主人公は39歳の会社役員。1つ歳下38歳の愛しい妻と幸せに暮らしていたが、ある日突然現れた水蜜桃のような18歳の秘書。
男はその可愛らしい笑顔に完全にイカれてしまい仕事も手につかなくなり妄想がアクセル全開で走り出す。
社内で彼女の髪の毛を拾えば匂いを嗅ぎ(しかも大切に保管し)、妻の隣で見る夢でも彼女のことを想う。
その拗らせた想いを乗せて走るベッドは車に見立てられ街中を自在に走る。
多くの人が語るようにこの不倫妄想ベッドカーシーンは歴史的名シーンに違いない。
こんなアイデアを実行して、実写でこれ程幻想的な映像に仕上げた人は他にいないだろう。
ピエール・エテックスの映画の魅力は物語の可笑しさやユーモラスな演技だけではなく、
ジャック・タチの『ぼくの伯父さん』のポスターのデザインを手がけていることからも分かるようにグラフィックデザインのセンスが素晴らしく、映画においてもどの瞬間も配色のバランスが考え抜かれているという点だ。衣装もインテリアも小道具も寸分違わずバッチリ構図と色使いが決まっている。
そのデザイン力は圧倒的で、
男が妻の写真の入った赤い写真立てを隠したり出したりするシーンさえも観る者にとって忘れられない体験にしてしまう。
その写真立てが無いと、絶対に駄目な風景だからだ。
赤い写真立ての不在が妻の不在のメタファかどうかは置いておいて、そういう一度見たら忘れない色遊び、映像遊びが沢山あって本当に楽しい。
新年からピエール・エテックスを観させてくれてイメージフォーラムさんありがとう。
☆映画館メモ
1/4 シアターイメージフォーラムにて
D列 私には近すぎた。見上げる感じ。