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マジカル・ガールのMSTYのネタバレレビュー・内容・結末

マジカル・ガール(2014年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

スペイン映画。この映画は、日本の魔法少女アニメ「魔法少女ユキコ」に憧れる白血病の少女アリシアの願いを知った父が、余命が短いであろうアリシアの願いをせめて叶えてあげたい、という善意に基づいて行動を起こす……というところから主なストーリーが始まります。

とにかく闇が深い。よかれと思って行動したことがどんどん悪い方へと進んでいきます。登場人物はそれぞれ、道徳的に悪い行動を起こしているのですが、それは誰かのためを思っての行動です。しかし、そうした行動がどんどん悪い方へと進んでしまい、最終的には、まさに誰も報われないところにまで到達してしまいます。

特に、この映画の唯一の良心であるアリシアは、自分のささやかな願いが他人をここまで動かすことになるなんて思いもしなかったでしょう。そのようにして他人が動いた結果、悲劇の連鎖が引き起こされてしまい、最終的にはアリシアまで悲劇に巻き込まれてしまいます。それが本当に不憫でした。

魔法でファンタジックになんでも解決されてみんなハッピーな形で終わるのかと思いきや、ぜんぜんそんなことはない。報われない映画ではありますが、むしろ誰も報われないからこそ、全編を通じて人間くささがにじみ出ている内容になっているように感じました。

劇中に登場する人たちの過去については、物語の中ではほとんど語られておらず、観る側の想像に任されています。たとえば、なぜバルハラは精神疾患に悩まされているのかといったことは劇中では一切語られていません。その意味では余白の多い作品ですが、人間関係について語られない部分があるからこそ、さまざまな想像をめぐらせることができる余地を残しており、それがこの作品の魅力を形成する大きな要素になっています。ぜひ、いろいろな想像をめぐらせながら観てほしいと思います。
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